約 773,997 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1622.html
8月ももう後半だというのにこの暑さは一向に収まる気配が無い。 そんな中でも俺達SOS団はクーラーも無い文芸部室に律儀にも全員集まっていた。 何でも今日は重大な会議があるとか。 ハルヒ「み、みんなよく集まったわね。さ、古泉くん説明して。」 ん?何か今日は様子がおかしいな。 古泉「僕の親戚の富豪が田舎に大きな屋敷を持っているんですが、そこに出るらしいのですよ。 幽霊がね。そこでこれはSOS団の活動にも嵌るのではないかと思って屋敷探索を提案したんです。」 ハルヒ「そういうことなのよ。でも、みんなが恐いっていうならこの探索は中止にしてもいいわよ。 それに夏休みもまだ残ってるし、みんなにも予定があるんじゃない?」 キョン「俺は別に平気だが」 長門「平気」 朝比奈さんは恐がって行くのを躊躇するかと思われたが意外にも乗り気であった。 みくる「屋敷で肝試しですか?孤島でやったのよりも楽しそうですね。」 未来には肝試しという習慣は滅びているのか?朝比奈さんはやけに夏のイベントに積極的だ。 それに超科学を普段から目にしている未来人の彼女には幽霊などちっとも恐くはないのだろう。 ハルヒ「みくるちゃんにキョン、強がらなくていいのよ?ここで逃げたって誰も責めはしないわ。 もちろん私は行きたいけど、一人でも欠席者が出たら、全員での思い出が作れないからね。 きっぱり中止するわ。」 キョン「俺は平気だって。」 どうせ今回のこれも古泉とその機関が用意したサプライズパーティーだろ。 それに朝比奈さんが非常に興味津々だし、俺も屋敷探索に賛成しておく。 ハルヒ「そ、そう。ならいいのよ。それじゃ各自準備しておいてね。」 その日の帰り道、俺は古泉に今回の提案について問いただした。 キョン「今回も機関が関わってるのか?」 古泉「いえ、今回は機関は全く関係がありません。本当に出るらしいんですよ。 その僕の親戚というのが、普段は冗談を言いそうもない堅物なお方なのですが、幽霊を見たなどと 騒ぎ出してしまいましてね。とても嘘をついているようには見えないのです。 もしかしたら非現実的な何かがあの屋敷にいるのかもしれません。」 宇宙人や未来人や超能力者が現に俺の周りにいるのだから、本物の幽霊がいたとしても たしかに不思議ではないな。俺は途端に恐くなった。 古泉と別れたあと、長門に相談してみた。 キョン「なあ長門、さっきの古泉の話聞いてただろ?あいつの言ってることは本当なのか? 本当は機関も関与してるパーティーなんじゃないのか?」 長門「古泉一樹は嘘は言っていないと思われる。」 ヤバイ・・・恐い! 行くのが嫌になってきた。 だが朝比奈さんは行くのを楽しみにしてるようだし、ここでやっぱり行くのやめたなんて言ってみろ。 朝比奈さんに根性無しだと思われるではないか! 行くしかないのか・・・ 探索当日、電車を乗り継いで屋敷に向かった。 古泉や朝比奈さんは楽しそうにしていたが俺はとてもそんな気分にはなれない。 やっぱり本当に幽霊やらゾンビやらが居るかもしれないとなると恐怖を抑えきれない。 古泉「僕も少々恐怖はありますがね、涼宮さんなら何とかしてくれるだろうと思っているんです。 だからこそこの提案を持ち出したのですよ。何も無ければそれはそれで安心ですし。」 と俺に耳打ちをした。 ハルヒだが、何だかコイツも元気が無いように見えるのは気のせいか? 顔は笑っているが、何だか無理に表情を造っているような感じだ。 泳げないのに泳げると嘘をついて友達にプールに誘われてしまい、プールに着いて水に入る前の 小学生みたいな表情だ。わかりにくい表現でスマン。 そうこうしてるうちに屋敷に着き、いかにも頑固そうなオジサンが門の前に居た。 オジサン「キミ達が一樹の紹介でやってきた霊媒師か! 早く除霊を頼む! 金ならいくらでも出すから!」 どうやらこのオジサンは屋敷の中で生活することができず、ずっとホテルで生活していたようだ。 何かだんだんマジっぽい状況になってきた。寒気がしてきた。恐い。 古泉「任せてください。ですがこの屋敷相当大きいですね。オジサンにも道案内のために 一緒に入ってほしいのですが。大丈夫です。彼らの傍にいれば平気ですよ。」 そう言ってオジサンを先頭に立てて俺達は屋敷に入った。 こういう状況がこの中で一番好きそうなあの女、涼宮ハルヒは、 オジサン・古泉・朝比奈さん・長門、という順番で入っていった列の長門のすぐ後ろに 着いて歩き始めた。意外だな。てっきり前に着いて俺達を先導するのかと思いきや。 ハルヒ「キョ、キョン。ああアンタは私の後ろね!早く来なさいよ!」 まさかコイツは・・・ 俺達は屋敷内をくまなく捜索したがとくに怪しい物はなく、幽霊やゾンビといったものにも遭遇しなかった。 そもそも幽霊って目に見えるのか?という疑問はさておき、この屋敷にはとくに何も無さそうだ。強いて言えば蚊が多いな。 オジサンが幽霊だと騒いでいたのも、窓から入る風の音が呻き声に聴こえたとか、 その程度の勘違いだろうという結論を下した。 やっぱ幽霊なんているわけないよな。 ハルヒ「なーによ、幽霊の奴、私たちにビビってどこかに隠れてるんじゃないの?出て来なさいよ!」 ハルヒにいつもの元気が戻った。まあお前の気持ちはわからないでもない。俺も恐かったしな。 キョン「俺は最初から幽霊なんているわけないって思ってたがな。でもこんなでかい屋敷で 本格的な肝試しも悪くないな。」 オジサン「ふん、バカバカしい。やはり霊能力特番みたいな下らない番組など見るんじゃなかったわ! キミ達もこんなことに付き合わせて悪かったね。少ないけどこれで美味しい物でも食べなさい。 ワシはちょっとトイレに行く。・・・一樹、まだ少し恐いからついてきてくれるか?」 そう言ってオジサンは古泉を連れてトイレへ行った。情けないジイサンだ。 ハルヒ「でも少し拍子抜けよね。幽霊をとっ捕まえてSOS団の団員にしてあげようと思ってたのに。」 キョン「いいなそれ。そいつが雑用係になってくれたら俺も少しは楽になるってもんだ。」 ギャアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーー!! トイレの方から叫び声が聞こえた。俺とハルヒ、朝比奈さんに長門は急いでトイレに向かった。 トイレの前には古泉がいて、しきりにドアをノックしてオジサンを呼んでいた。 古泉「どうしたんですか!チャックに皮を挟んだのですか?あ、みなさんドアを破るのを 手伝ってください! オジサンがチャックに皮を挟めたようなので!」 ドアを蹴破るとそこには青白い顔で倒れているオジサンの姿があった。 オジサン「赤い着物の女が・・・赤い着物の女が・・・」 俺達は倒れているオジサンを布団まで運んで寝かした。それでも寝言を言い続けている。 オジサン「赤い着物の女が・・・・こっちに来る・・・・」 キョン「これはあれだ。昔泣かした女の幻覚でも見たんだろ。」 古泉「オジサンは女に泣かされても泣かしたことはありません。」 キョン「じゃあ何だ?これは赤い着物を着た女の仕業だとでも?」 古泉「わかりません。ただ得体の知れない何かがいるのは確かでしょうね。」 みくる「やっぱり幽霊ですか・・・?」 キョン「そんなわけないっすよ。どうせオジサンはチャックに皮を挟んだショックで倒れただけですよ。」 キョン「俺は幽霊なんて非科学的なものは断じて信じない。アホらし。付き合いきれねえよ。 みんな帰ろうぜ。」 そう言って俺は立ち上がった。 古泉「・・・何ですかこれ?」 長門「・・・・・・」 俺は右手で長門の手を掴み、左手で古泉の手を掴んで屋敷を立ち去ろうとしていた。 キョン「い、いや、お前らが恐がってると思って気を使って手を繋いでやったんだ!」 長門「手が汗ばんでる・・・」 古泉は俺の気遣いを振り払い、いきなり嘘を叫んだ。 古泉「 あ っ! 赤 い 着 物 の 女 が そ こ に ! ! 」 ガッターン!ガサガサ・・・ 俺はすぐさま押入れに飛び込んで隠れた! みくる「何やってるんですかキョンくん?」 キョン「いやあの カブト虫がいた気がしたので捕まえようと・・・」 みくる「キョンくん、もしかして幽霊が・・・・」 キョン「ビビってないですって!ホントです!」 古泉が人をバカにしたようなニヤケ面をしながら肩をすくめていた。 古泉「意外と臆病なんですね。女性陣は平然としていらっしゃるのに貴方ときたら・・・。 涼宮さん、どう思いま・・・・」 ガタ! ガタガタ! 置き物のでかい壷の中に一生懸命隠れようとしているハルヒの姿があった。 古泉「涼宮さん・・・一体何を・・・?」 ハルヒ「いやあの エデンへの入り口が・・・」 古泉・朝比奈さん・長門の無言の冷たい視線が俺とハルヒに向けられる。 キョン「何だその目は! 待て待て! 違うんだ! ハルヒはそうかもしれんが俺は違うぞ!」 ハルヒ「ちょっ、ビビってるのはアンタでしょ! 私はあれよ。胎内回帰願望があるだけよ!」 古泉「ハイハイ。わかりました わかりました」 長門「エデンでも胎内でもどこへでも行けよ」 急に古泉・朝比奈さん・長門が沈黙をし、目を見開いて俺達の後方を凝視した。 その目が次第に恐怖を感じているときの目に変わっていった。 キョン「何だオイ。驚かそうたって無駄だぞ。同じ手は食わん。」 それでも三人は固まって俺達の後ろを凝視している。顔が真っ青だぞ。 ハルヒ「ちょっと・・・しつこいわよ。」 古泉「ウワ―――――――ッッ!!」 みくる「キャ―――――――ッッ!!」 長門「!!!!!!!!!!!!!!」 三人は悲鳴を上げながら大急ぎで走って逃げた。 キョン「ったく、手の込んだイタズラしやがって。朝比奈さんまで・・・」 ハルヒ「バカね。こんなくらいで驚くわけないじゃない。」 二人が振り向くとそこには赤い着物を着た女が逆さまになってこちらを凝視していた。 キョン・ハルヒ「・・・・こ、こんばんは~・・・・・・・・」 ギャアアアアアアアアアアアアア―――――――ッ!! 場面は走って逃げている古泉達に移る 長門「見ちゃった・・・本当にいた・・・」 みくる「キョンく~ん! 涼宮さ~ん!」 古泉「二人のことは忘れましょう!もうダメだ!」 古泉がふと振り向くと、キョンとハルヒが走って来ていた。 みくる「あ、何とか切り抜けてきたようですね。」 古泉「いや待ってください。 しょってる! 着物女をしょってますよ!」 みくる「イヤ―――――――ッ!」 古泉「こっち来るなァァァ!」 走って古泉達に追いつこうとしているキョンとハルヒは・・・ ハルヒ「ちょっと! みんな何で逃げるのよ! コラー! みくるちゃんに古泉君に有希! 待ちなさーい!」 キョン「なあハルヒ、やけに背中の半分が重いんだが、お前はどうだ?」 ハルヒ「そういえば重い・・・キョン、ちょっと確認してくれない?」 キョン「うるせーな自分で確認しろよ。」 ハルヒ「じゃあこうしましょう。せーので同時に振り向いて確認ね。」 キョン「お前も絶対見ろよ?裏切るなよ?」 せーの! 恐ろしい顔した女が俺とハルヒの背中に乗っかっていた。 どおりでハルヒから離れて走ることができなかったわけだ。 ギャアアアアアアアアアアアア―――――――――ッ! ギャアアアアアアアアアアアア――――――――ッ! ・・・・・・・・・・・ 古泉達は外にある物置の倉庫に隠れていた。そこでキョンとハルヒの悲鳴を聞いていた。 みくる「悲鳴が・・・」 古泉「今度こそやられたのでしょう・・・」 長門「しめた。これでヒロインの座は私のもの」 古泉・みくる「言ってる場合か!」 みくる「何でこんなことに・・・」 古泉「実は以前に彼(キョン)を亡き者にするために外法で妖魔を呼び出そうとしたことがあるんです。 あの化け物はもしかしたらそのときの・・・」 みくる「何てことしてるんですか!貴方のせいでキョンくんと涼宮さんは~!」 古泉「ちょ、ここせまいんですから暴れないでくださ・・・」 古泉がふと戸の隙間を見ると、そこから自分達を覗き見ている女の顔が・・・ 古泉「ぎゃあああ―――――――! 出、出、出すぺらァど――――!」 古泉は女に向かって急に土下座を始めた。 古泉「スミマセン!とりあえずスミマセン! マジ スミマッセン! ほら見て!マッガーレ!マッガーレ!」 古泉はみくると長門の頭を掴み、地面に叩きつけて無理矢理に土下座をさせた! 古泉「テメーらも謝れバカヤロー! 心から頭下げればどんな人にも心通じんだよバカヤロー!」 ハルヒとキョンは池の近くにある草むらに隠れて着物女をやり過ごしていたようだ。 その着物女が古泉達の元に行っていることを知らず、また古泉があんなことになっていることも知らずに 二人は怯えながら隠れていた。 ハルヒ「ね、ねえキョン。よーく考えたらあの女って幽霊でもオバケでも何でもない、ただの人間じゃない?あんたビビりすぎよ。」 キョン「そういやそうだな。足もあったし口が裂けてたわけでもないし、ちょっと顔が恐いだけの女の人だったような。ビビってんじゃねーよハルヒ」 ハルヒ「そ、そうよ!古泉君達があの人を見ていきなり驚いて逃げるもんだから、てっきりオバケかと思ったけど」 キョン「よく考えたらオバケのわけないよなw古泉も臆病なヘタレ野朗だな。次会ったらただじゃおかねー」 ハルヒ「あの女もとっちめてやるわ。まあ私は逃げてる間もアンタと違ってあの女にメンチ切ってたけど」 キョン「俺なんてずっと奴をつねってた」 ハルヒ「小さいのよアンタは。私なんて・・・」 ガ サ ッ ! ! ドボン! ドボン! 急な物音にキョンとハルヒはビビッて池に飛び込んだ。 その物音の正体がただのカエルの仕業だったことに気づいて安堵した。 ハルヒ「さ、さーて、水も浴びてスッキリしたことだし、そろそろ反撃といくわ」 キョン「む、無理すんなよ声が震えてるぞ。女と古泉は俺が仕留める。ヘタレは帰れ」 ハルヒ「ビビッてんのはアンタでしょ?ホントは股間が濡れてるから池に飛び込んだんじゃないの?」 キョン「俺達がここで争ってもしょうがねー。俺達を驚かして楽しんでるあの女に説教の一つでもしてやるぞ。」 そう言って俺達は歩き出し、古泉達とその女を発見した。着物女に一生懸命土下座していた。 古泉「あのホント、靴の裏も舐めますんで、勘弁してくださいよ!」 何しとんじゃアイツ・・・ 古泉は朝比奈さんと長門の頭を地面にめり込ませながら土下座をしまくっていた。 しかし俺達が駆けつけると女はすぐにどこかへ逃げて消えた。それでも古泉は気づかずに土下座を続けていた。 キョン「古泉・・・」 古泉「うわああ!すいませ・・・。ああ、貴方でしたか。これは彼女を油断させてから取り押さえようという僕の作戦 でしてね。朝比奈さんと長門さんにも協力してもらおうと思って土下座をさせたんですよ。」 俺とハルヒの無言の冷たい視線が古泉を攻める。 古泉「信じていないようですね。まあ次に彼女が出てきたら僕に任せてください。 すぐに片付けますから。 赤い着物を来たお方、出て来なさい!この僕が引導を」 赤い着物の女「なんだァァァ!やれるもんならやってみろォォォォ!」 古泉「ヒィィィィィ―! 出たァァァ!」 ハルヒ「ダ―――ッ!もうヤバイもうヤダ!」 キョン「ハルヒに古泉、よく見ろ。彼女は幽霊でもゾンビでもない。普通の人間だ。」 ハルヒと古泉は恐る恐る彼女を凝視した。人間であると確認するやいなや、彼女を強引に取り押さえた。 ハルヒ「もう逃げられないわよ!観念なさい!」 古泉はクールな顔でカッコつけて彼女を護身術みたいなすごい技で取り押さえた。 コイツら急に強気になったなw ハルヒ「さあ白状しなさい!何で貴方はこの屋敷にいるの?」 女「本当にすいませんでした。彼(屋敷の主)に中出しされたせいで子供が出来ちゃったんです。 私は彼と一緒にこの子を育てたかったのに彼は生涯一人で生きると言って認めてくれなかったんです。 そこで私はオバケのふりをしてこの屋敷に潜伏し、彼を驚かしていたの。 彼が一人でいるのが恐くなれば私と結婚してくれるかと思って」 阿呆だなこの女。でもお腹には子供がいるのか・・・。 古泉「そういうことだったのですか。オジサンもスミに置けませんね」 みくる「何だか気の毒ですね・・・。」 オジサン「知るか知るか!あの夜はワシは酷く酔っていたのだ。どんなゴリラでもいいから 一発やりたい気分だったんじゃ!でなきゃ誰がこんな女と。こんな女のためにびた一文たりとも 金を使う気はない!出てけー!」 ハルヒ「・・・・・・・・・」 ガタン! ガタガタ! バリーン! 何だ今の音? 俺達はその音がした方向へ向かった。 棚に置いてあった重く高価そうな壷が落ちて割れていて、額に入って飾られた絵も落ちていた。 古泉「地震も無かったのに妙ですね・・・。野良猫がこんな重い壷を動かせるとは思いませんし・・・。」 オジサン「棚にも特に変化がない・・・不思議だ・・・」 ハルヒ「もしかしてこの屋敷、まだ何かいるんじゃ・・・」 オジサン「そ、そんな・・・。おい女、これもお前の仕業か!?」 女「私は本当に知りませんよ・・・?」 たしかに妙だ・・・ オジサン「一体何だというんだ! 誰がやった!」 古泉「我々は彼女も含めてたしかに全員揃っていました。そしてこの壷はそう簡単に倒れるような物ではありません。」 ハルヒ「得体の知れない何かがこの屋敷にいるってこと?」 オジサン「ヒィィィッ!そんな!」 不穏な空気が辺りを包む中、ハルヒが口を開いた。 ハルヒ「ねえオジサン、この屋敷、何か霊的なものが潜んでそうでオジサン一人じゃ恐いでしょ?ずっとホテルに住むわけにはいかないし、 新しい家を建ててもこういう霊ってついてくるものよ。この際だから彼女と一緒に住んじゃえば? そうすれば恐怖も和らぐだろうし、それに賑やかな家庭には霊やオバケは現れないものよ。」 オジサン「・・・そうじゃな。おいお前さん、良ければワシと一緒に住まないか? さっきはゴリラなんて言ってすまなかったな。ワシ、照れ屋なんじゃ。」 こうして二人は一緒に住むことになったらしい。 これはハルヒが望んだことなのだろう。 彼女を不憫に思ったハルヒが、またあの奇妙なデタラメパワーを使って壷を割り、オジサンを恐がらせることでオジサンを素直にさせた。 俺はそう思いたい。 ―翌日― 恐怖の幽霊探索ツアーを終え、翌日の月曜の放課後、いつもの如く文芸部室に俺、ハルヒ、古泉、長門が集まっていた。朝比奈さんはまだHRが終わってないらしい。 ハルヒ「幽霊に会えなかったのは残念ね。とっ捕まえてSOS団のパシリにしてやろうと思ったのに。」 ビビってたくせによく言うぜ。 古泉「所詮は霊や妖怪と言ったものは、人が恐怖を感じるもの・・・例えば腐敗した死体や夜の暗闇、災害などを大袈裟に捉えたものらしいですからね。 また、言うことを聞かない子供に恐怖を与えて言うことを聞かせようとするためにオバケなる存在を考えたとか。」 もうお前が何言っても笑えるよw ハルヒ「でもあの女の人、幸せになれるといいわね。」 古泉「オジサンはああ見えて出来たお方です。少し照れ屋なだけなのですよ。大丈夫、あの二人ならいい家庭を築けますよ。」 まあ実際に幽霊やゾンビと言ったものに出くわさなくてよかった。そんなものがいるわけはないが、この団長様の前ではどんな常識も無効化されちまうからな。 それにしてもあのハルヒにも弱点があったとはなw オバケが恐いなんて可愛らしいところも・・・ ガチャ・・・・ ガッターン! バリーン! みくる「あ、あ、あ、すみませ~ん。普通に開けたはずなのに、いきなり外れちゃいました・・・。」 度重なるハルヒの乱暴なドアの開け方のせいで寿命が早まったドアは、朝比奈さんがドアを開けたそのときに外れて倒れた。 それはもう物凄い大きい音で倒れて壊れた。 みくる「・・・み、みなさん、何をしているんですか?・・・」 俺、ハルヒ、古泉の三人はビビッて机の下に隠れていた。 キョン・ハルヒ・古泉「いやあの コンタクト落としちゃって」 長門「ヘタレが三人」 ところであのオジサンの屋敷はもう大丈夫なのだろうか? 二人の仲のことじゃなくて、おそらくハルヒが生み出したであろう霊的な現象は収まったのだろうか。 まあ幸せな家庭には霊やオバケは現れないとかハルヒ自身が言ってたし、 オジサン達が仲良くやっていればもう何も起きんだろう。 屋敷にて 女「アナタ、最近帰りが遅いけど一体どこで何してるの?」 オジサン「黙れ黙れ。ワシがどこで何をしようとワシの勝手だ。お前はただ家事だけをやっていれば・・」 バリーン! オジサン「ヒィィィィィィッ!」 完
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1912.html
涼宮ハルヒの日記 今日は、日曜日。 どうせみんな暇だろうと思って電話してみたけど古泉君は、 『すみません、今日はどうしても外せないようじがありましてそれではまた明日学校で、では失礼します』 なんというか古泉君らしい丁寧な口調で電話をきった。 で、みくるちゃんは『あっ、涼宮さんどうしたんですか?』と言ったので今日いつもの所にこれるか聞いたら『今日は、…ごめんなさいお買い物に行くから…ごめんなさい今日は行けません・・・』 みくるちゃんらしい言い方で電話をきった。明日学校でバニーの服を着せて門の所に立たせてやる「SOS団をよろしく~」とでも言わせながらあたしも一緒に 有希にかけたら『・・・・・・・・・』無言だし今日いつもの所にこれるか聞いたら『今日は無理』理由を聞いたら『今日は、お買い物』といって無言になった『そう、じゃ明日学校で会いましょ』そういって電話をきった 残るのは 『あっキョン今からいつものとここれる?』 『これるっていったいなにをする気だ?』 『いいからこれるの?これないの?』 『行けるかどうかと言われれば行けるが・・・』 『そ、じゃ2時に集合ね、遅れたら罰金だんねっ!』 『はいはい』 キョンは、予定も無く空いていた、そうと決まればさっそく着替えてしたくしていつもの所にいかなきゃ。 なんたって今日は、今日は、 キョンとデートなんだもん! 会ったらなにから話そう…いっそのこと告白でもしてしまおうか。 いや、SOS団の今後のことや夏休みのことでも話そうか。 なんだろう、話したいことがいっぱいありすぎてわかんないや とりあえず今日は、キョンとデートなんだし時間もある。 いそがないとキョンが先に着いてるかもしれない そう考えながらいつもの『所』に急いだ。 キョンの日記 さて今の状況から説明せにゃならんことに代わりないので説明するが、 えーただいまハルヒとデート中である。 集合場所に着くなり 「今日の予定変更」 「おいまて予定変更っていったいなにをするつもりだ?」 「なにって・・・・デ・・デー・・・」 「言いたいことがあるなら頭の中で整理してからいえ」 「じゃあ一回しか言わないからよく聞きなさいよ」 なぜかハルヒは大きく深呼吸してから三文字の単語を発した。 「だからデ・・・デートしようってぃって・・・」 「最後何言ったかよく聞こえなかったがなんていった?」 「だからデートしようって・・・いってんでしょ!」 一瞬、いやかなりの時間がたったか、今ハルヒはなんて言った?デート?あのハルヒがか? 「恋愛感情なんて一種の精神病の一種なのよあんなもんに時間を費やす理由を教えて欲しいもんだわ」 なーんていっていたハルヒがデート?ホワイ?なぜ? 「何よ・・・もしかして嫌?」 「いーやべつにかまわんが」 「じゃあきまりねっ!」 ハルヒは、100ワットはありそうなとびきりの笑顔を俺にむけ何処にいくかをいつもの溜まり場である北口前の近くにある喫茶店、とわ言っても毎回財布が軽くなっていくのが悲しい。 「遊園地?水族館?それとも…」 「おまえは何処にいきたいんだ?」 「遊園地!」 そうしていそいそ電車に乗りちょうど眠たくなってくる30分間を何とかのりきり隣町、とわ言っても乗り換えを二回もして2、30分ばかし歩いていかにゃならんとーい所にあるでっかい遊園地だ(隣町じゃなくて他県にある遊園地だ、クソなんで市内に造らなかったんだいまいましー) 「ほら、キョン早く早く!」 「待てよっ!」 券を買って中に入るととんでもない数の人がうごめいていた。 「これだけ混んでると進みにくいわね…」 ふと後を見てみると「最後尾」とかかれたプレカードを掲げている人をよく見ると 古泉がそこにいた。 「あっ古泉君じゃない?こーいずーみくーん」 「おや、どうなされたんですか?涼宮さんそれと…」 そのにやけた顔をこっちに向けるな。 「それより古泉君何してんの?」 「バイトですよ」 「バイト?」 胡散臭い事ぬかすな何かある絶対に何かある。 「ふーんじゃバイトがんばってね」 ハルヒが歩きだしたので着いて行こうとしたら 「涼宮さんと何かあったんですか?」 「どうもこうもいきなり呼び出されたかと思ったらこの通りだ」 「デート・・・ですかまぁ涼宮さんらしい誘い方じゃないですか」 「どこがだ」 「つまり涼宮さんはあなたとデートをしたっかたとよめますね、ですがそのままデートの誘いをする訳にもいかないと思ったんでしょうあなたが今日誘われた理由わなんですか?」 「いきなりこれるかどうかを問われたが」 「涼宮さんもあなたに断られるのが怖かったんでしょうだからいけるかどうかだけを聞いてきたそして希望通りの回答が帰ってきた…まあこんなとこでしょう」 「すなおにデートならデートっいえばokしていただろうに俺だって反対ばっかしてるワケじゃないってのによ」 「そこに乙女心が作用したんでしょう」 「こらっーキョン早く行くわよ!」 「それでわどうぞデートの続きをおたのしみください」 「そのまえに一つきいておく、今回は『機関』とやらは関係ないんだな?」 「ええまったくかんけいないですよ」 「じゃバイトせいぜいがんばれじゃな」 「・・・・こちら古泉ターゲットがそちらにいきました」 『了解。引き続きターゲットの動きに注意せよ』 「はい、わかりました、」 「キョン!早くしなさい!観覧車はすぐに混んじゃうだからね!」 「もう混んでるぞ」 「え…もうっキョンご早く来ないから混んじゃったじゃない!」 「古泉と話ていた時間は五分もかかってないぞ」
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5272.html
~部室にて~ 長門「……」ペラ ハルヒ「有希、明日遊びいきましょ」 長門「明日は土曜、団活がある」 ハルヒ「なんだかキョンが、ど~しても外せない用事があるらしいのよ」 長門「用事?」 ハルヒ「そうなのよ。団長であるあたしに理由も話さないのよ」 長門「その用事が理由だと思われる」 ハルヒ「わ、分かってるわよ!あたしが言いたいのは」 長門「言いたいことは分かる。でもそれはプライベート」 ハルヒ「それは分かるけど……」 長門「なら今回は仕方ない」 ハルヒ「とにかく!団員が揃わないから明日の団活は中止よ」 長門「そう」 ハルヒ「だから……遊び行かない?」 長門「二人で?」 ハルヒ「そう二人で。どっかいきましょ」 長門「どっかとは?」 ハルヒ「どっかよ」 長門「そう」 ハルヒ「行き当たりばったりでもいいじゃない」 長門「……」 ハルヒ「……それとも行きたくない?」 長門「……」フルフル ハルヒ「なら決まりね!時間とかは後でメールして決めましょう」 長門「……」コク ハルヒ「ところで、さっきからなに読んでるの?」 長門「これ」 ハルヒ「『僕らが死体を拾○わけ』?気味の悪いタイトルね。ホラーかサスペンス?」 長門「最初はそう思って借りた」 ハルヒ「最初は?」 長門「そう。実際は体験談中心の博物誌」 ハルヒ「面白いの?」 長門「ユニーク」 ハルヒ「ふーん」 長門「……」ペラ ハルヒ「そういえば、有希って休みの日はなにしてるの?」 長門「家にいる」 ハルヒ「出かけたりしないの?」 長門「たまに」 ハルヒ「どこ行くの?」 長門「図書館」 ハルヒ「……まぁ、予想どうりの答えね」 長門「そう。あなたは?」 ハルヒ「あたし?」 長門「……」コク ハルヒ「街を散策してるわ。団長たるもの、休みの日でも不思議探索を欠かさないのよ」 長門「実際は?」ペラ ハルヒ「……小物とか服とか探しまわってる」 長門「そう」ペラ ハルヒ「べ、別にいいじゃない!休みの日くらい」 長門「何も言っていない」 ハルヒ「うっ、とりあえずみんなにはいわないでね?」 長門「善処する」 ハルヒ「頼むわよ、こんなこと言えるの有希だけなんだから」 長門「……」コク ハルヒ「それにしてもみんな遅いわね」 長門「……」ペラ ハルヒ「なんか聞いてる?」 長門『何も』 ガチャ キョン「悪い遅れた」 ハルヒ「ちょっと遅いわよ、キョン」 キョン「だから、悪いって。それに同じクラスなんだし俺が掃除当番なの知ってるだろ?」 ハルヒ「知ってるわよそんなの、でも遅いのよ」 キョン「おまえは人と会話する気あるか?」 ハルヒ「後は、古泉君とみくるちゃんね」 キョン「はぁ、もういい」 ガチャ 古泉「遅くなりました」 ハルヒ「あ、古泉くん」 古泉「少し職員室に寄っていまして」 ハルヒ「構わないわ。後はみくるちゃんね」 キョン「なんだ、古泉には苦言しないのか?」 ハルヒ「は?ちゃんと理由があるじゃない」 キョン「……」 ハルヒ「しいて言うなら、副団長とヒラの人徳の差かしら」 キョン「ふん、言ってろ」 古泉「まあまあ、お二人とも。僕のためにケンカしないで下さい」 キョン「お前な」 古泉「んふ。冗談ですよ」 キョン「ったく」 カチャ みくる「遅れちゃいましたぁ~」 ハルヒ「遅いわよ!みくるちゃん」 キョン「みんな今来たばかりだから大丈夫ですよ」 ハルヒ「……」 キョン「……」 ハルヒ「みくるちゃんには優しいのね?」 キョン「さぁな、誰かさんと比べた人徳の差じゃないのか?」 ハルヒ「……」 キョン「ふん」 みくる「え~と、着替えるんでキョン君と古泉君、部屋出てもらっていいですかぁ?」 キョン・古泉「分かりました」 ガチャ ハルヒ「なによ!キョンのやつ」 長門「……」ペラ みくる(うぅ~、涼宮さん機嫌が悪いみたいですぅ) ハルヒ「ねぇ有希!どう思う!?」 長門「しいて言うならあなたに非がある」 ハルヒ「!?」 みくる(な、長門さん!?) 長門「彼といる時のあなたの態度は、あまり良くない」 みくる(そんなこと言ったら涼宮さんが……) ハルヒ「……そうかなぁ」 長門「そう」 みくる「?」 ハルヒ「……分かった、気をつけてみる」 長門「その方が賢明」 ハルヒ「一言多いのよ」 長門「……」ペラ みくる(あれ?) コンコン キョン『朝比奈さん。もういいですか?』 みくる「あっ、どうぞぉ」 ガチャ 古泉「さて涼宮さん。今日は何を?」 ハルヒ「まず、明日の団活は中止にするわ」 みくる「じゃあ、お休みですねぇ」 ハルヒ「そう、誰かさんが出れなくて欠員がでちゃうからね」 長門「……」ジー ハルヒ(あっ、やっちゃた) キョン「悪かったな」 古泉「おや、どちらかへ行かれるんですか?」 キョン「あぁ、ちょっと中学時代の友達とな」 ハルヒ「なんで古泉君には言うのよ!」 キョン「いちいち突っかかってくるなよ。友達に会うだけだし、言ったところで誰だか知らないだろ」 長門「……」ジー ハルヒ(そんなに見なくても分かってるわよ、有希) キョン「それより、古泉。今日はなにをやるか?」 古泉「……ふぅ、あなたと言う人は。まったく」 キョン「なんだ?」 古泉「いえ、何でも」 みくる「涼宮さんは土曜はどうされるんですかぁ?」 ハルヒ「有希と遊びに行くわ」 みくる「えぇぇ~!ほんとですかぁ?」 ハルヒ「ほんとよ。ねぇ、有希?」 長門「……」コク 古泉「……」 キョン「どうした、古泉?」 古泉「いや、珍しい組み合わせだなと」 キョン「たしかにそうだな」 古泉(まさか長門さんが直接彼女へのコンタクトを取りに?) 長門「それは考えすぎ」 古泉「おっと、ばれましたか」 長門「これは普通の交友関係」 古泉「それはそれは。余計な詮索をしてすいません」 ハルヒ「みくるちゃんはどうするの?」 みくる「溜まってるレポート(仕事)があるから、それをやりますぅ」 ハルヒ「そうなの?大変ね。古泉君は?」 古泉「僕ですか?う~ん、どうですかね。まだ分かりません」 ハルヒ「デートとかしないの?古泉くんって結構モテそうじゃない」 古泉「デートですか?……そうですね。たまにはいいかもしれません。後で誘ってみます」 キョン「待て古泉。お前彼女いるのか?」 古泉「えぇ」 ハルヒ(い、いたんだ) キョン「俺はそんな話聞いてないぞ!」 古泉「聞かれてませんので」 キョン「全く。いいよな、お前は。俺なんか影も形もないぞ」 ハルヒ「……」 長門「……」 みくる(な、なんてことを) 古泉(これは、流石にあきれますね) キョン「?」 長門「……」バタン キョン「長門、もう帰るのか?」 長門「……」コク ハルヒ「……あたしも一緒に帰る」 長門「わかった」 みくる「わたしは着替えちゃったんで、少しお掃除してから帰りますぅ」 キョン「俺も少し残ってきます。女性を一人残すのは危険ですので」 古泉「なら僕もお供しますよ」 ハルヒ「あっそ、それじゃね……」 古泉(やれやれ、今日は久々にバイトですかね) ガチャ ~帰り道にて~ ハルヒ「……」トボトボ 長門「……」トテトテ ハルヒ「……はぁ」 長門「前にも言った。彼の鈍さは異常」 ハルヒ「べ、別にそれで溜息ついたんじゃないわよ」 長門「あなたにも反省点は多々あった」 ハルヒ「だ、だから」 長門「だから?」 ハルヒ「……キョンは関係ないって」 長門「本当に?」 ハルヒ「……うん」 長門「そう」 ハルヒ「……」 長門「……」 ハルヒ「……やっぱり……ほんとじゃない」 長門「わかってる」 ハルヒ「あいつがいるとなんか落ち着かないのよ。それで思ってることと逆の行動とっちゃうの」 長門「……」 ハルヒ「……どうすればいいんだろう」 長門「私には恋愛の知識はない。だから上手く説明出来ない」 ハルヒ「……」 長門「ただ」 ハルヒ「?」 長門「私といる時のあなたはとても優しい」 ハルヒ「……」 長門「だから感情のコントロールを身に付けるべき」 ハルヒ「コントロールかぁ.まさかそれを有希に言われるとはね」 長門「よくは分からない。ただ、私なりの推論」 ハルヒ「ん~ん。ありがと、有希」 長門「別にいい。友達なら当たり前」 ハルヒ「ふー、有希のおかげで少し楽になったわ」 長門「そう」 ハルヒ「うん。それで明日だけど、何時だったら大丈夫?」 長門「何時でも」 ハルヒ「それじゃあ十一時にいつもの駅前はどう?」 長門「構わない」 ハルヒ「決まりね」 長門「……」コク ハルヒ「もうお別れね。あたしこっちだから」 長門「……」コク ハルヒ「また、明日ね。ばいばい」 長門「また」 ~次の日~ 長門「遅い。今日はあなたの奢り」 ハルヒ「遅いって、まだ十一時前じゃない?」 長門「あなたはいつも彼に同じ台詞を言ってる」 ハルヒ「それはそうだけど……」 長門「だけど?」 ハルヒ「だけど……なんでもない」 長門「そう。奢りは嘘だから気にしなくていい」 ハルヒ「いや、おごるわよ」 長門「いい。代わりにそのうちまたカレーを作ってもらう」 ハルヒ「有希がそれでいいなら」 長門「それがいい」 ハルヒ「わかったわ。それじゃ行きましょ?」 長門「……」コク ハルヒ「どっか行きたいとこある?」 長門「よくわからない」 ハルヒ「実はあたしも特にないのよ」 長門「……」ジー ハルヒ「だ、だって昨日の今日よ?」 長門「……あなたには誘った責任がある」 ハルヒ「分かったわよ。……えっと~……そうだ!」 長門「決まった?」 ハルヒ「この辺りは団活で散々練り歩いたでしょ?」 長門「……」コク ハルヒ「そして今、あたしたちは駅前にいます」 長門「……」コク ハルヒ「なのでどっか行きます」 長門「……」 ハルヒ「な、なによ」 長門「振り出しに戻っただけ」 ハルヒ「だから!電車乗って知らない街に行って色々見て回るのよ」 長門「色々?」 ハルヒ「そうよ。なんか美味しいものあるかもしれないでしょ?」 長門「わかった」キラ ハルヒ「それじゃ切符買いに行くわよ」 ~駅にて~ ハルヒ「有希、頭のなかで数字思い浮かべて?」 長門「数字?」 ハルヒ「そう、なんでもいいわ」 長門「浮かんだ」 ハルヒ「いくつ?」 長門「百」 ハルヒ「却下」 長門「……」 ハルヒ「ニから十まで」 長門「なら、四」 ハルヒ「それじゃあここから四つ先の駅で降りましょ」 長門「わかった」 ~目的地にて~ ハルヒ「なんていうか。意外に街ね」 長門「そう」 ハルヒ「有希は初めて?」 長門「……」コク ハルヒ「そっか。あたしも初めて」 長門「……」グゥ~ ハルヒ「お腹減ったの?」 長門「……」コク ハルヒ「じゃあ先にお昼にしましょうか。なに食べたい?」 長門「……あれ」 ハルヒ「あれ?……バイキング」 長門「行く」トテトテ ハルヒ「わかったわよって、ちょっと置いてかないでよ!」パタパタ ~バイキングにて~ 長門「……」モグモグ ハルヒ「まだ入るの?」 長門「次を盛ってくる」 ハルヒ「あたしはアイス食べて終わりにする」 長門「そう」 ハルヒ「この後は、さっき可愛い服屋さん見つけたから有希の服選びましょ」 長門「服?」 ハルヒ「だって有希の部屋って、私服全く置いてないんだもの」 長門「ない」 ハルヒ「だから、古着屋とかでもいいから色々探して見ましょうよ」 長門「わかった」 ハルヒ「で、まだ食べるの?」 長門「後はデザート」 ハルヒ「もう好きにして」 ~商店街にて~ ハルヒ「結局1時間半きっかり食べてたわね」 長門「満腹」 ハルヒ「よかったわね」 長門「……」コク ハルヒ「それじゃ、服見に行きましょ」 長門「わかった」 ハルヒ「なんとなく有希に似合いそうなのがあったのよ」 長門「そう」 ハルヒ「そうなの♪有希ももうちょっと可愛くするべきよ」 長門「あなたは?」 ハルヒ「あたしはこれでも結構モテるのよ。ナンパもひっきりなしなんだから」 長門「……そう」 ハルヒ「なによ今の間は?」 長門「少し哀れんだ」 ハルヒ「有希じゃなかったらひっぱたいてたわね」 長門「そう」 ハルヒ「あたしの心の広さに感謝なさい」 長門「……」トテトテ ハルヒ「あっ、ちょっと待ちなさいよ」 ~古着屋~ 長門「ここ?」 ハルヒ「そうよ。電車の窓から見えたの」 長門「そう」 ハルヒ「あっ!これこれ。有希ちょっと来て」 長門「?」トテトテ ハルヒ「これよ、これ。結構生地薄いわね。でもいいわ」 長門「これは?」 ハルヒ「ちょっと着てみなさいよ」 長門「……」 ハルヒ「こうして胸元のチャック少し下ろして」 長門「……」 ハルヒ「フード被って」 長門「……」 ハルヒ「ほら鏡の前に立ってみて」 長門「耳」 ハルヒ「そうなのよ!このパーカーどう?この犬とも猫とれない微妙な耳!今日の有希がスカートで良かったわ」 長門「よくわからない」 ハルヒ「なに言ってんのよ。すごく似合ってるわよ。値段も手ごろだし」 長門「そう」 ハルヒ「店員さん!これ頂戴!」 長門「まだ買うとは言ってない」 ハルヒ「あたしが買ったげるわ。いつも有希には助けてもらってるし」 長門「?そんな覚えはない」 ハルヒ「こっちの話よ。おとなしくおごられなさい?」 長門「……わかった」 ハルヒ「任しといて!」 店員「そちらの商品ですか?」 ハルヒ「そうです。これもうちょっと安くなりませんか?」 店員「え~と、これでも安くしてる方なんですよ」 ハルヒ「そこをなんとか!」 店員「う~ん……わかりました」 ハルヒ「やった!」 店員「ただし、また今度友達でも連れてきてくださいね?」ニコ ハルヒ「わかりました!」 ハルヒ「有希。今度はみくるちゃんとかも連れて来ましょ?」 長門「構わない」 店員「よろしくね。それじゃあ二千五百円になります」 ハルヒ「はい」 店員「丁度頂きます。またのお越しを」 ハルヒ「今何時?」 長門「十五時半すぎ」 ハルヒ「そんなもんか。そういえばさっきのお店のBGMなんか良かったはね」 長門「あれはFriendly Fi○es」 ハルヒ「え!知ってるの?」 長門「たまたま」 ハルヒ「有希ってああいう洋楽っぽいの聴くんだ」 長門「私が聴くわけではない。以前、古泉一樹が聴いていた」 ハルヒ「へぇ~、古泉君が。でもなんか似合うわね。キョンが聴いてたらなんだか、背伸びしてるみたいで似合わないもの」 長門「そう」 ハルヒ「そうだ有希、CD見ていこ」 長門「……」コク ~二時間後~ ハルヒ「もう六時か」 長門「夕暮れ」 ハルヒ「もう地元に帰りましょうか」 長門「そうする」 ハルヒ「……」トテトテ 長門「……」トテトテ ハルヒ「今日は楽しかった?」 長門「悪くなかった」 ハルヒ「厳しいわね」 長門「つまらないとは言ってない」 ハルヒ「はいはい。次はちゃんと面白そうなこと探しとくわよ」 長門「期待している」 ハルヒ「わかったわよ」 ~帰り道にて~ 長門「疲れた」 ハルヒ「そうね、歩き疲れたわ。それに色々買ったし」 長門「……重い」トテトテ ハルヒ「後は帰るだけね」 長門「……」コク ???「もうこんな時間か。ついでだしどっかで飯でも食ってくか?」 ???「そうだね。家の人に夕飯はいらないと連絡しておくよ。しかしついでとは失礼じゃないかい?」 ???「ん?そうか?次は気をつけるよ」 ???「全く君ってやつは」 ハルヒ「あれ?今の声って?」 長門(間の悪さも異常) ???「くつくつ。ところで美味しい店をちゃんと知ってるんだろうね、キョン?僕の舌は以外にグルメだよ?」 キョン「そういわれてもなあ。自称グルメの佐々木と違って、俺の舌はあくまで一般のものなんだが」 佐々木「まあいいよ。きっとキョンと一緒ならどこでも美味しく感じる」 キョン「またそうやってプレッシャーを」 佐々木「くつくつ」 ハルヒ「……なによあれ」 長門「彼と彼の中学時代の友人のはず」 ハルヒ「手なんか繋いで、どう見てもデートじゃない」ジワ 長門「まだ分からない」 ハルヒ「どう分からないのよ!団活サボって!高校生の男女がこんな時間まで!二人でいて、手も繋い、で……どう見てもデートじゃない!」ポロ 長門「落ち着いて」 ハルヒ「ゴメン。……有希に当たっても仕方ないのに」ポロポロ 長門「別に平気」 長門(精神状態が非常に不安定。古泉一樹の健闘を祈る) ハルヒ「あいつ、彼女なんて影も形もないって言ってたくせに……」ポロポロ 長門「……」 ハルヒ「……今から有希の家行っていい?こんな顔して家帰れないわ」 長門「構わない」 ハルヒ「……ごめん、ね」ポロポロ ~長門宅にて~ ハルヒ「うん、もう遅いから泊まってく。ちゃんと明日中に帰るから。へ?違うわよ。長門有希って。前話したでしょ?あたし、彼氏なんて、いないし……うん、心配しないで。それじゃあおやすみ」 長門「おわった?」 ハルヒ「大丈夫よ。なんかお母さん、あたしが男のところに泊まると思ってたみたい」 長門「そう」 ハルヒ「笑っちゃうわよね。彼氏どころか失恋直後だっていうのに」 長門(以前のように閉鎖空間が発動しない。何故?) ハルヒ「あ~あ。月曜からどんな顔して会えばいいのよ」 長門(精神状態も安定しはじめてる) ハルヒ「ほんと、久しぶりにボロ泣きしたわ」 長門「……」 ハルヒ「ねぇ、有希」 長門「何?」 ハルヒ「あたし、どうしたらいいかな?」 長門「どうとは?」 ハルヒ「実際あたしの一方的な片思いだったわけじゃない?」 長門「それはまだ分からない」 ハルヒ「いいのよ。もう慰めてくれなくて」 長門「以前行った通り、彼の鈍さは異常。一緒にいた異性はほんとに友達かもしれない」 ハルヒ「もういいって」 長門「よくない」 ハルヒ「もういいのよ!」 長門「私はあなたに元気になってほしい」 ハルヒ「……大丈夫よ、あたし強いから」 長門「それは表向き」 ハルヒ「……」 長門「私の知ってるあなたは優しく、脆弱」 ハルヒ「有希……」ポロポロ 長門「あきらめるのは早い」 ハルヒ「有希、有希。う、うぅぅぅ~」ポロポロ 長門「私はあなたの友達」 ハルヒ「うぅっ、うっ、あ、ありが、とう」ポロポロ 長門「……大丈夫」ギュ 長門「落ち着いた?」 ハルヒ「……うん。ぐす。大丈夫」チーン 長門「そう」 ハルヒ「……今日、一緒に寝よ?」グス 長門「いい」 ハルヒ「どっちのいいなのよ?」グス 長門「肯定」 ハルヒ「分かったわ。……きっと一晩寝たら元気になる」 長門「そう」 ハルヒ「うん。あ、それと」 長門「?」 ハルヒ「さっきあたしのこと脆弱って言ったでしょ?言いすぎよ」コツッ 長門「言葉のあや」 ハルヒ「ふふ、今ので許してあげるわ」 長門「助かる」 ハルヒ「シャワー借りていい?」 長門「……」コク ~布団にて~ ハルヒ「はあぁ、有希って暖かーい」 長門「私は苦しい」 ハルヒ「我慢してよ」 長門「なるべくそうする」 ハルヒ「……有希?」 長門「何?」 ハルヒ「だーい好き」ギュ 長門「……悪い気はしない」 ハルヒ「あ~あ、有希になら素直に言えるのに」 長門「そう」 ハルヒ「そうなのよ。……オヤスミ」 長門「オヤスミ」 ~月曜~ ハルヒ(気にしちゃダメよ、涼宮ハルヒ。いつも通り、いつも通りよ) ガラ キョン「おぉ珍しく早いな。どうした?」 ハルヒ「べ、べ、別にどうしよもないわよ」 キョン「?そうか」 キョン「土曜は長門と一緒だったんだろ?どこ行ったんだ?」 ハルヒ(キョンはあのコと朝からいたのかなぁ) キョン「なに、お前と長門の組み合わせでなにをやってるのか、気になってな」 ハルヒ(なんでそんなに普通にしてられるの?) キョン「お~い。聞いてるのか?」 ハルヒ「キョ、キョン!?」 キョン「ん、なんだ?」 ハルヒ「一昨日、有希と一緒に歩いてたら……駅前で……」 キョン「駅前で?」 ハルヒ「あ、あんたが……その、女の子と歩いてるの見たんだけど……」 キョン「ん?あーその、見られたか」 ハルヒ「そりゃ、あんな地元ならね」 キョン「だよな」 ハルヒ「……彼女?」 キョン「いや、ただの腐れ縁の友達だったんだ」 ハルヒ「だった?」 キョン「あの時点まではな。あの後帰り道でな、まあ、恥ずかしい話だが告られたんだ」 ハルヒ「!!!」 ハルヒ「そ、それで?」 キョン「で、一週間後にまた会おうって。その時に答えがほしいって、言われた」 ハルヒ(いっ、一週間!?長すぎ!生きた心地しないじゃない) ハルヒ「それで、どうするの?」 キョン「さぁな、せっかく一週間も猶予もらったんだ。ゆっくり考えるさ」 ハルヒ「あんた、そのコのこと……好きなの?」 キョン「あぁ、大事な友達だからな。嫌いになれるはずがない」 ハルヒ「……そう」 キョン「?」 ~昼休み~ 長門「普段どおりどころか、根掘り葉掘り聞いたと?」 ハルヒ「ウン……聞いた」 長門「そう」 ハルヒ「……」 長門「あなたはどうする?」 ハルヒ「わかんない」 長門「そう」 ハルヒ「どうすればいいかな?」 長門「私には分からない」 ハルヒ「……」 長門「でも、悔いは残さないほうがいい」 ハルヒ「……」 長門「……」 ハルヒ「そうだよね。別にまだ付き合ってるわけじゃないし」 長門「……」 ハルヒ「あたしも答えを出す」 長門「そう」 ハルヒ「いますぐ言う勇気はないけど、きっと……明日言うわ」 長門「頑張って」 ハルヒ「うん。ありがと有希。また放課後ね」 長門「また」 ガチャ 長門「……」 ガチャ 古泉「やってくれましたね」 長門「古泉一樹」 古泉「長門さん、下手をしたら世界が一瞬で改変することになりますよ」 長門「……」 古泉「なぜあんな軽率なことを?」 長門「土曜の夜」 古泉「は?」 長門「閉鎖空間は発生した?」 古泉「大規模なのが一つ。でも一分もたたずに消えましたよ」 長門「そう」 古泉「なにがあったんです?」 長門「……」 古泉「なるほど。そんなことが」 長門「最近の涼宮ハルヒの精神は、非常に落ち着いていた」 古泉「あくまで個人的な推論ですが」 長門「何?」 古泉「原因はあなたかも知れませんね」 長門「?」 古泉「もしかすると結果がダメでも」 長門「まだ分からない」 古泉「あくまで過程ですよ。恐らく告白が失敗に終っても、改変は行われないでしょう」 長門「……」 古泉「彼女のここ最近のあなたへの依存度は高い」 長門「……」 古泉「長門さんとの触れ合いで、彼女の精神が成長したと考えると多少つじつまが合います」 長門「成長?」 古泉「えぇ。実は土曜日の閉鎖空間は、大小あわせて実に四十九日ぶりのものでした」 長門「……」 古泉「わずかですが、感情のコントロールが可能になってきてるとみていいでしょう」 長門「そう」 古泉「今回の件、機関のほうでどうされるか分かりませんが、僕は関与しないようにします。では」 ガチャ 古泉(しかしこの場合。鍵が彼ではなく長門さんに移るということになる。厄介ですね) ~帰り道~ ハルヒ「明日、あいつに言ってみる」 長門「そう」 ハルヒ「これでダメなら諦めるわ」 長門「本当に?」 ハルヒ「……頑張る。それ以上に迷惑かけてSOS団がおかしくなっちゃうのは、嫌だし」 長門「……」 ハルヒ「なんか言ってくれないの?頑張れ、とか、きっと大丈夫、とか」 長門「せいぜいフラれてくるといい」 ハルヒ「有希!怒るわよ!」 長門「冗談。でもそのくらいの元気があなたには必要」 ハルヒ「ちょっとはTPOを考えなさいよ」 長門「気をつけてみる」 ハルヒ「有希?」 長門「?」 ハルヒ「あたしたちって、親友、よね?」 長門「親友?」 ハルヒ「そうやって聞き返されると、なんか恥ずかしいんだけど」 長門「私は一向に構わない」 ハルヒ「ほんと?」 長門「本当」 ハルヒ「ほんとにほんと?」 長門「私の言葉を信じられないなら親友ではない」 ハルヒ「た、ただ確認しただけじゃない」 長門「そう」 ハルヒ「あらためて、これからもよろしくね?あたしの親友」 長門「こちらこそ」 ~Fin~ ~次の日の昼休み~ ハルヒ「キョン!!」 キョン「おう。どうした?」 ハルヒ「後で話しがあるのよ。だから放課後、部室行く前に屋上に来なさい!」 キョン「ここじゃ言えんのか」 ハルヒ「放課後ったら放課後なのよ!いい?必ず……必ず来るのよ」 キョン「あぁ?わかった」 ハルヒ「じゃあ、あたし行くとこあるから」ダッ キョン「行っちまった」 ~部室にて~ 長門「放課後?」 ハルヒ「呼び出した」 長門「そう」 ハルヒ「……」 長門「……」 ハルヒ「……もし」 長門「?」 ハルヒ「もしダメだったどうしよう」 長門「諦めるのでは?」 ハルヒ「……出来るかな」 長門「私はあなたではない」 ハルヒ「あたし、中学時代から告白されることはあった」 長門「……」 ハルヒ「今でもたまにあるわ」 長門「自慢?」 ハルヒ「そうじゃなくて、いざ自分もされる側から、する側になるとこんなにも違うんだなぁって」 長門「……」 ハルヒ「もうこのまま、ここからいなくなっちゃいたいわ」 長門「もう弱気?」 ハルヒ「……」 長門「いつものあなたではない」 ハルヒ「あたしだって……なんだかんだ普通の女の子なのよ」 長門「普通?」 ハルヒ「普通よ。お腹だってすくし、試験前は勉強するし、友達と一緒に遊びたい。……どうしよもなく好きなやつだっている」 長門「……」 ハルヒ「一番嫌ってた普通をあたしがしっかり体現してるの。おかしいわよね」 長門「そんなことはない」 ハルヒ「ありがと」 長門「……」フルフル ハルヒ「とにかく、そういうことだから今日の部活遅れるわ」 長門「わかった」 ハルヒ「昼休み終るからもう行くわね」 長門「涼宮ハルヒ」 ハルヒ「なに?」 長門「健闘を」 ハルヒ「ありがと、有希」 ガチャ 長門(……頑張って) ~放課後の屋上にて~ ハルヒ(キョン、あんたのことが好きなの) ハルヒ(なんかシンプルすぎるわね) ハルヒ(あんたをあたしの彼氏にしてあげるわ。感謝なさい!) ハルヒ(だ、ダメよ。これのどこが素直なのよ) ハルヒ(一人じゃ勇気出ない。今から有希を呼びに……それもダメよね) ハルヒ(どうしようどうしようどうしよう) ハルヒ(やっぱり止めればよかったかな?) ドクンドクン ハルヒ(あぁ~もう!心臓がうるさい!) ガチャ ハルヒ「!!!」 キョン「おう。待たせたな。なんか谷口のやつに絡まれてな」 ハルヒ「そ、そう」 キョン「それで、話ってなんだ?」 ハルヒ「……」 キョン「他の連中に聞かれたくない話なんだろ?」 ハルヒ(……キョン) キョン「まあ、これで案外口が堅い方なんだ」 ハルヒ(キョン) キョン「だから信用してくれていいぞ?」 ハルヒ(なんであんたは、そんなにあたしに優しくしてくれるのよ) キョン「……そんなに言いづらいことか」 ハルヒ(あんたがあたしに構ってくれたせいで) キョン「大丈夫か?」 ハルヒ(あんたのせいなんだから) キョン「おい、顔真っ赤じゃないか?熱でもあるのか」 ハルヒ(とっくに頭に血が上りきってるわよ) キョン「別に無理しなくていいぞ?」 ハルヒ「無理なんかじゃない!!!」 キョン「うぉ!いきなり大声出すなよ」 ハルヒ「キョン!聞いて!」 キョン「さっきから聞いてるって」 ハルヒ「最初はそんなことなかった」 キョン「?」 ハルヒ「あんたの提案でSOS団を作って、今のみんなが集まった」 キョン「……」 ハルヒ「あたしがわがまま言ったときも、あんたは口では文句言いながらも着いてきてくれた」 キョン「わがままな自覚はあったんだな」 ハルヒ「お願いだから、今は変な横槍いれないで」 キョン「すまん」 ハルヒ「みんなと、あんたと出会って一年。色んなことがあった」 キョン「……」 ハルヒ「昨日あんたが昔の友達に告白されたって言ったわよね?」 キョン「あぁ」 ハルヒ「それを聞いて、あたしは、生きた心地がしなかった」 キョン(そういうことかよ) ハルヒ「あたしは、あたしは……」 キョン「……」 ハルヒ「……」 キョン「……」 ハルヒ「あたしは、あんたのことが好きなの。好きになっちゃったのよ」 キョン「……そうか」 ~部室にて~ キョン「遅くなったな」 古泉「今日は随分遅かったですね」 キョン「あぁ。野暮用があってな」 長門「……」 古泉「そうでしたか。ご苦労様です」 キョン「男からの労いの言葉はないな」 古泉「それはすいません」 みくる「あのぉ~」 キョン「なんですか?」 みくる「涼宮さんは一緒じゃないんですかぁ?」 長門「……」 古泉「……」 キョン「……あいつは。……長門」 長門「何?」 キョン「ちょっと廊下にいいか?」 長門「……」コク 古泉(長門さん、後は頼みましたよ) ガチャ キョン「あのよ、あいつ今屋上にいるんだ」 長門「……」 キョン「あいつのそばに行ってやってくれないか?」 長門「何故」 キョン「ん?」 長門「何故、彼女ではダメだったの?」 キョン「なんだ、知ってたのか」 長門「何故?」 キョン「先に好きになっちまったやつがいるんだ。ほんとに、ただそれだけだ」 長門「そう。行ってくる」タタッ キョン(悪いな) ~屋上にて~ ガチャ!! 長門「……」 ハルヒ「あ、有希じゃない。どうしたの?」 長門「……彼から聞いた」 ハルヒ「そっか。隣座んない?」 長門「……」コク ハルヒ「うん、ダメだった」 長門「そう」 ハルヒ「正直ちょっと、いや違うわね。かなり落ち込んでるわ」 長門「……」 ハルヒ「そりゃね、少しはいけるんじゃないかな?って期待もあったのよ」 長門「……」 ハルヒ「でもね、ダメだった。ダメだったのよ」ジワ 長門「……」 ハルヒ「やっぱり人並みに普通なんか求めたからかなぁ」 長門「……」 ハルヒ「ねぇ、有希。なんか言ってよ」 長門「私には何を言っていいか分からない」 ハルヒ「なんでもいいわよ。有希の言葉は何でもあたしに届くわ」 長門「……なら、前言撤回する」 ハルヒ「え?」 長門「あなたは弱くない。とても強い」 ハルヒ「……強くないわよ」 長門「そんなことはない」 ハルヒ「……」ポロ 長門「もっと胸を張るべき」 ハルヒ「それはちょっと出来ないわ」 長門「……そう」 ハルヒ「失恋ってこんなに辛いのね」 長門「私には経験がない」 ハルヒ「自慢?」 長門「違う。恋愛経験そのもの」 ハルヒ「そうなんだ」 長門「そう」 ハルヒ「……あいつ、この間のコのことが好きなんだって」 長門「そう」 ハルヒ「それでね聞いたの」 長門「何を?」 ハルヒ「変に未練がましくしたくなかったけど、もし、もしよ?」 長門「……」 ハルヒ「あたしが先に告白してたらどうだった?って」 長門「……」 ハルヒ「それでもダメだって」 長門「そう」 ハルヒ「でも、そこで肯定されたら、あいつ女なら誰でもいいってなっちゃうじゃない?」 長門「それなら私にも可能性はあった」 ハルヒ「こら」コツ 長門「ジョーク」 ハルヒ「もう。……それでね」 長門「……」 ハルヒ「それであたし良かった、って思ったのよ」 長門「?」 ハルヒ「あたしの好きになったやつは、そういう真っ直ぐな人だったわけじゃない?」 長門「……」 ハルヒ「あたしは間違えてなかったんだなぁ、って。こいつを好きになって良かったんだ、って」 長門「そう」 ハルヒ「それでね……有希、あたしのこと褒めて?」 長門「褒める?」 ハルヒ「うん。あたしね……泣かなかったの。悔しいからあいつの前では泣かなかったの」ポロポロ 長門「涼宮ハルヒ」 ハルヒ「泣きた、かった、けど、な、泣かなかったの」ポロポロ 長門「やっぱりあなたは強い」 ハルヒ「もう、うっ、泣いて、ヒック、いいよね」ポロポロ 長門「構わない。私しかいない」ギュ ハルヒ「あたし、や、やっぱり、あいつのこ、と、うっ、好きなのよ」ポロポロ 長門「そう」 ハルヒ「うっ、ヒック、うぅぅ~」ポロポロ 長門「……」ギュ ハルヒ「なんだかあたし泣いてばっかりね」グス 長門「いい」 ハルヒ「こんな情けない顔して部活行けないわね」 長門「そう」 ハルヒ「古泉君に行けないってメールしとく」 長門「わかった。私は鞄を持ってくる」 ハルヒ「うん。校門でね」 長門「……」コク ~部室にて~ ガチャ 古泉「おかえりなさい、長門さん」 長門(古泉一樹がここにいるということは) 古泉「えぇ。あなたのおかげですよ」 長門「!」 古泉「いつぞやのお返しですよ」ニコ 長門「そう」 キョン「長門……」 長門「大丈夫。でも今日はもう帰る」 キョン「そうか。わかった。よろしくな」 長門「……」コク ガチャ みくる「え?あのぉ~、どういうことですかぁ?」 古泉「ふむ。朝比奈さんがご存知ないということは、今回のことは未来で想定の範囲内ということですか」 みくる「ふぇ?」 キョン「おい、古泉。お前もしかして」 古泉「いったいどうしました?」ニコ キョン「……なんでもねぇよ」 みくる「わ、わたしにも教えてくださいよぉ~」 ~帰り道にて~ 長門「待たせた」 ハルヒ「全然」 長門「そう」 ハルヒ「さっ、帰りましょ?」 長門「今日は私の家に?」 ハルヒ「ありがとう。でも大丈夫よ」 長門「そう」 ハルヒ「一人で頭冷やしてるわ」 長門「わかった」 ハルヒ「多分、泣いちゃうと思うけど」 長門「そう」 ハルヒ「もし辛くて、辛くてどうしようもなくなったら……電話してもいい?」 長門「構わない」 ハルヒ「真夜中かもしれないわよ?」 長門「大丈夫。眠かったら無視する」 ハルヒ「有希のブラックジョークにも慣れてきたわ」 長門「それは困る」 ハルヒ「なんでよ」 長門「あなたの反応はユニーク」 ハルヒ「勝手に言ってなさい」 長門「そうする」 ハルヒ「……もしあたしが明日学校に来なくっても、心配しないでね?」 長門「する。当然」 ハルヒ「大丈夫よ。もしかしたら一日くらい落ち込んでないと、やってらんないかもしれないし」 長門「……」 ハルヒ「それで、伝言をお願い」 長門「伝言?」 ハルヒ「もしかしたら、みくるちゃんは分かんないけど、古泉君って勘が鋭いから今回のこと分かっちゃうかもしれない」 長門「……」コク ハルヒ「気を使わないで、って。普段どおりにしててほしいの」 長門「わかった。伝える」 ハルヒ「もちろん、有希もね」 長門「わかった。……彼は?」 ハルヒ「あいつは自分でなんとかするわ?自分で蒔いた種だもの」 長門「そう」 ハルヒ「そうよ」 ハルヒ「それじゃあ、またね」 長門「……」コク ハルヒ「ちゃんと元通りになってくるから」 長門「涼宮ハルヒ」 ハルヒ「ん?なに?」 長門(感じていることを上手く言語化できない) ハルヒ「?」 長門「今日はお疲れ様」 ハルヒ「?変な有希」 長門「それはお互い様」 ハルヒ「あっそう」 長門「そう」 ハルヒ「ふふ♪こんどこそ、またね」 長門「また、明日」 ~次の日の朝~ キョン(昨日の今日だし顔合わすのは辛いな) ガラガラ ハルヒ「……おはよ」 キョン「お、おう」 ハルヒ「……」 キョン「……」 キョン(ダメだ、耐えられん) ハルヒ(……今言わないと) ハルヒ・キョン『き、昨日のことだけど』 キョン「あ」 ハルヒ「な」 キョン「あ、あぁっと。先いいぞ」 ハルヒ「う、うん」 ハルヒ「昨日のことだけどね、やっぱり忘れてなんて言えない。言いたくない。でもね、気にしないでほしいのよ」 キョン「……」 ハルヒ「あたしたちがギクシャクしたら、SOS団にも迷惑かかる」 キョン「そうだな」 ハルヒ「だから今まで通りでいてほしいの。あたしが馬鹿やったら、あんたがそれを止めて、有希や古泉君に助けてもらって、みくるちゃんは……よくわかんない」 キョン「それは朝比奈さんに失礼だろ?」 ハルヒ「冗談よ」 キョン「ったく、とはいえそれには賛成だ」 ハルヒ「……」 キョン「虫のいい話だが、俺も同じ事を言おうと思っていた」 ハルヒ「うん」 キョン「そういうわけだ。これからもよろしくな。団長さん?」 ハルヒ「よろしく。今まで以上に引っ張りまわしてやるわ」ニコ キョン「それは勘弁してくれ」 ~放課後・部室にて~ ハルヒ「昨日は来れなくって悪かったわね!」 古泉「いえいえ。団長にも休みは必要ですよ」 みくる「はい、涼宮さん。お茶です」 ハルヒ「ありがと。そうだ、みくるちゃん!」 みくる「ふぇ?なんですかぁ?」 ハルヒ「昨日、ネットで面白いもの見つけたのよ!」 みくる「面白いものですかぁ?」 ハルヒ「ふふ、そのうち届くから楽しみにしといてね」ニヤ みくる「なんだか、笑い顔が怖いですよぉ~」アセ ハルヒ「それと今週末も団活は中止」 古泉「おや?」 ハルヒ「キョンが用事あるんだって。でしょ?」 キョン「あぁ、悪いな」 ハルヒ「悪いと思ってるなら今すぐにみんなにジュース買って来なさい。あたしは百パーセントのオレンジね」 キョン「な!」 古泉「ぼくはコーヒーを。微糖がいいですね」 キョン「おい」 長門「カルピス」 キョン「長門まで」 みくる「わ、わたしは何でもいいですよぉ」 キョン「はぁ、分かったよ」 ガチャ ハルヒ「みくるちゃん、ちょっと用事があるから一緒に来て」 みくる「は、はい」 ガチャ 古泉「僕たちだけになりましたね」 長門「……」ペラ 古泉「どんな魔法を使ったんです?」 長門「情報操作しか出来ない」 古泉「比喩ですよ。今回は過去最大級の閉鎖空間が発動すると、機関のほうでも準備していました」 長門「……」 古泉「だけどあなたはそれをくい止めた」 長門「……」 古泉「とてもありがたいことですが、それは同時に脅威でもあります」 長門「何もしていない」 古泉「ご冗談を」 長門「本当。これは涼宮ハルヒの精神の強さ」 古泉「しかし」 長門「それがわからないのであれば、機関の観察力も程度がしれる」 古泉「言ってくれますね」 長門「事実」 古泉「そういうことにしておきましょう」 長門「……」 古泉「最後に一ついいですか?」 長門「何?」 古泉「あなた個人への質問です。あなたにとって涼宮ハルヒとはなんなんですか?」 長門「親友」 古泉「しかし、あなたは正確には人間ではない」 長門「それでも彼女にそう望まれた。なら拒む理由はない」 古泉「彼女には逆らわないと?」 長門「違う。これは私の意思でもある」 古泉「……分かりました。失礼なことを聞いて申し訳ありません」 長門「いい」 古泉「僕の見立てでは、彼女の新しい鍵はあなたです。どうか彼女を裏切らないでやってくださいね?」 長門「心配いらない。涼宮ハルヒは私の親友。彼女は私が守る」 ~Fin~
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/6555.html
Ⅰ ドカドカドカ、と鈍器で頭でも殴られたんじゃないかと疑問に思ってしまうような擬音と共に分厚い本を目の前に置かれてから2日経った頃、俺は早くも心に土嚢でも負ったかのように挫折しかけていた。1週間でノルマ5冊。これは読書が好きな人でも結構キツいんじゃなかろうか。 「よりによって哲学‥‥」 俺はいよいよブラック企業に務めたかのような感覚に押し入られてしまった。 ハルヒ曰く、 「SOS団たる者、多少の本を読んで常に知的な人材である必要があるのよ!」 「本を読んでいるイコール頭良いなんていう安直な考えは止めた方がいいぞハルヒ」 「皆、異論はある? あるなら読書大会が終わった後原稿用紙10枚分みっちり書いてきたなら、見てやらないことはないわよ」 俺の言葉は遠回しすぎたのか、異論としては認められなかった。いや、仮にボウリング玉がピンと接触するぐらいの近さでの言葉を言ったってハルヒの奴は耳をきっと傾けない。要するに知的云々は置いといて、長門のように本が読みたかったのだろう。ただ自分1人で読むのは嫌だから、SOS団を巻き込んだわけだ。長門はなんとなく嬉しそうに見えた気がするが。 そして、まさかの分野別である。何でもかんでも5冊読めばいいとなると、俺は市立図書館にある絵本やら雑誌やらで済ましてしまうとハルヒは先に睨んだようだ。どうしてそんなことばかりに気がついて宇宙人や超能力者は未来人に気づかないのか。全くもって不服だ。 「さあ、1本引くのよ!」 SOS団の市内探索の時のように、ハルヒはどこからか爪楊枝を取り出し、俺達に1本ずつ引かせた。爪楊枝な先には文字が書いてあったが、‥‥というよりなんて器用な奴だ‥‥はさておき、字を書いたのはご立派だがハルヒ、 「なんて書いてあるんだ、これ」 「おや、僕はエッセイですか」 「あ、‥‥私は小説のようです」 「‥‥‥‥‥」 「何よ、キョン。あんたまさか日本語を読めないわけ?」 いや、というより他の奴らの視力が可笑しいんじゃないか。油性のインクが滲んでて全く読めない。何故に爪楊枝に書いたんだハルヒ。 「貸しなさいよ、もう! 哲学って書いてあるじゃないの」 お前それ適当に言ってないだろうな。 「あたしが医学だから、有希は科学ね。じゃあ各自1週間の内に5冊読むこと。いいわね!ちゃんと感想文書くのよ。凄かった、の一言で終わるものなら、‥‥‥」 「‥‥‥終わるものなら?」 ニヤリ、と笑ったハルヒの顔に俺は初めて背中にゾクゾクとする恐怖を感じた。駄目だこいつ。罰金以上の何かえげつないことをするに違いない。私達が笑うまで一発芸よ、かもしれない。 そして、そんなこんなで現在に至るわけだ。医学に当たらなかっただけマシと言えるが、にしても哲学‥‥。俺はページを捲るも、圧倒的文字数と量、その威圧感に早くも今日の夕飯が口や鼻のような穴という穴から出そうになった。これはまずい‥‥。 異変でもないので長門に頼むわけにはいかず、かといって本をほったらかしにするわけにもいかない。 「勘弁してくれ‥‥‥」 ついつい独り言が出てしまうが、こればっかりは本当に参った。まるで身を隠す草原もなければ助けてくれる仲間もいない、数えきれないライオンに囲まれたシマウマのような心境だ。 俺はトイレ休憩風呂タイム挟む2時間の中で本と向き合ったが、進んだのは5ページほどだった。 ‥‥なんか変だな、と思ったのは朝登校してから数分経った後だ。いつもならハルヒがぎゃあぎゃあと耳もとで叫び、ハイテンションで 「キョン、読書はちゃんと進んでるでしょうね!?」 と聞いてきそうなものだが、今回は何も言ってこない。どうしたもんかと後ろを振り向くと、窓の外をボケーと見つめる、いかにも日向ぼっこをするお爺さんのような光景が見てとれた。いや、ハルヒの場合ならお婆さんか。 「どうした。本を読みすぎて夜更かしでもしたか?」 「‥‥‥うるさいわね」 どうやら虫の居所が悪いらしい。俺はそうですかと曖昧な返事をしておいて、大人しく前を向いておくことにした。久しぶりに機関が働くかもしれない時に、あまり刺激しておかない方がいいと思ったのだ。言っておくが、古泉のことではない。新川さんや森さん、多丸さんに夏にお世話になったから、そう思っただけのことだ。 しかし気になることがある。 目の下にクマを作ってる奴が、どうして今寝ない? ハルヒは授業中お構いなしに昼寝してることなんてしょっちゅうだし、それで教師に起こされて俺にやつ当たりするのだからほとほと迷惑をしている。しかしどうだろうか。そのハルヒが眠いのを我慢して窓の外を見ているのだ。何か面白いものがあるのかと俺も見たが、そこにはいつもと変わらない空と風景があるだけだった。 「‥‥‥変ですね。閉鎖空間は発生しておりませんし、涼宮さんともあろう方が自分の体の健康管理を出来ていないなんて。それなら僕達機関の方に何かしら報告されているはずですが‥」 「あのな、ハルヒだって女子高生なんだろ。夜更かしの1つや2つ、ましてや今は本を読んでるんだ。読んでて時間をつい忘れちゃったーなんてこと、あってもおかしくないんじゃないか」 「涼宮さんが小説を読んでいるのならまだ分かりますが、医学です。体にどのようなことをしたら害が出るかが乗っている本で、それはないと思います。第一イライラしたのなら僕達が真っ先に分かるはずなんです。夢の内容によってでさえ閉鎖空間を出す彼女ですから」 「…つまり、ハルヒは正常なのか?」 「健康そのもの、のはずです」 驚いたことに。 放課後にはきっといないだろうと踏んだのにもかかわらず、笑顔を誰かれ構わず振り撒く詐欺師のような高校生は独りで詰め将棋ならぬ詰めチェスをやっていた。閉鎖空間はどうした、と聞けば 「なんのことでしょう?」 と聞き返してきたのだ。きっとハルヒの鬱憤に付き合わされているに違いないと思ったのに、見当違いにもハルヒは健康そのものだという。しかしどの角度から見たって、ハルヒの目の下にはクマがある。 「真後ろから見たら頭しか見えませんよ」 黙れ古泉。そういう意味で言ったんじゃない。 ともかく、俺はまた何か嫌な予感がしてたまらなくなった。次はなんだ。巨大カマドウマの後なんだから秋らしくコオロギか? 「大丈夫ですよ。前にも言いましたが、此処は力が攻めぎ合いとっくに異空間化していますから。害のある者は立ち入れません」 「‥‥‥異空間の真っ只中にいるとは信じられない光景なんだがな」 肝心のハルヒはどこかへ行っているらしく、朝比奈さんは今日はメイド姿のまま小説に没頭、長門はいつも通り窓際の椅子に腰かけて読書。古泉はチェス盤を片付けはじめ、将棋盤の準備をする。はさみ将棋を俺とするようだ。 「古泉、お前本の方はどうだ?」 古泉はふう、とわざとらしく溜め息をつきながら 「それがまだ2冊目に入ったばかりで」 なんて嫌味を言いやがった。俺と代われ、俺と。 「そうはいきませんよ。涼宮さんは、貴方に哲学を読んで欲しいから貴方は哲学と書いてある爪楊枝を取ったのです。それを僕と代わってしまったら、それこそ閉鎖空間発生の種ですよ」 「サルトル、ソクラテス、カント‥‥キリストの教えなんてなんの役に立つ? なんで俺と一番無縁な哲学を持ってきたんだ、ハルヒは」 「貴方がノーと言えない日本人だからですよ」 イエスだけにか、と突っ込むと思ったら大間違いだぞ古泉。お前はどや顔をしているが、ちっとも上手くない。 「‥‥‥ハルヒは」 「お待たせぇー‥」 俺が古泉に口を開きかけた時、ドアがゆっくりと開いてハルヒが入ってきた。先日までの元気は宇宙の果てでさ迷っているのか、目にしたハルヒはやはりどことなく弱っていた。 古泉の目つきが少しだけ変わる。 「‥‥あっ、お茶を用意しますね」 ハルヒの存在に気付いた朝比奈さんは、可憐な姿のまま急須の元へ。ハルヒは何も言わず、ただ1冊の分厚い本を抱えてパソコンの前に座った。 長門も少し顔を上げて、ハルヒの状態を観察‥‥いや、分析しているようだ。ハルヒはそれに気付かず、パソコンの電源もつけずに本をパラパラと捲った。 「‥‥ハルヒ、朝から元気ないじゃないか。まさか2日間かけて4冊読んだときじゃないだろうな」 「うるさいわね‥‥アンタはちゃんと読んでるの? 感想文出さなかったら、死刑だからね」 感想文を出さなかったら死刑という法律が出来れば、日本人の9割は恐らく日本海に沈められるだろう‥‥‥じゃなくて。 人がせっかく心配したのにこの態度だ。俺がハルヒを心配するなんてまずないことなんだがな。その物珍しい出来事を自ら蹴り飛ばすとはね。わかった、もう心配しねーよ。 「‥‥‥‥」 「‥‥‥‥」 「涼宮さん、お茶です」 「ありがとう、みくるちゃん」 ズズズとハルヒがお茶をすする音以外何も存在しないかのように思える空間。古泉は何故だかマジな表情でハルヒを見ているし、長門も相変わらずだ。 朝比奈さんは古泉と長門の様子に戸惑っているらしい。そんな朝比奈さんの姿はとっても可愛い。が、いつまでも見ているのも失礼だ。 古泉は何事もなかったかのように盤上をいじりだし、俺もようやく朝比奈さんから目を離してはさみ将棋をし始めた。 後でまた4人で集まるのだろうかと思考しながら古泉を7連敗させた後、長門のパタンと本を閉じる音でSOS団の活動は終わった。これではまるで文芸部だ、っとまだここは文芸部室だったな。 帰り道にそっと古泉に今日集まるのかどうかを聞いたが、 「もう1日様子を見ましょう。長門さんも何も言わないことですし」 と、どうやら何も面倒事なく今日1日は無事終了するようだ。しかし俺は家で積んである哲学書5冊の事を思い出し、平穏な日常などまずこの1週間の内はあり得ないなと頭を悩ませることになったのは言うまでもない。 そして結局本を1ページも読まずに登校した翌日、ハルヒの体調はさらに悪化していた。クマは濃くなり、明らかに一睡もしてないのが目に見えて分かる。 「ハルヒ、本に夢中になるのも良いけどな、それで体壊したらアホみたいだぞ。知的な人材を揃えるためにやってるんじゃなかったのか?」 「‥‥‥‥」 昨日の不機嫌な反応より、 「うっさいわねバカキョン! あんたにそんなことを言われる筋合いないわよこのエロキョン!!」 とでも言ってくるものかと思っていたら、まさかのダンマリだ。これはいよいよ本当に不味いような気がしてきた。 あのハルヒがこんなに萎れてるとは、リアルインディペンデンス・デイが勃発するくらい信じられないことだ。ここには宇宙人もいるし、ハルヒの感情次第で世界が滅びるやら何やら言われているがもちろんそういう意味じゃない。サイコロが10連続1が出るような確率のようなもんだということだ。 「涼宮さんがそう望めば、サイコロで連続1が出ることも可能ですよ」 と古泉なら言いそうだ。 「ねえ、キョン‥‥‥」 返事を返さないもんだからまた無視されたものかと見なしていたら、ハルヒは窓の外を昨日と同じように頬杖つきながら目を向けていた。一体どうしたというんだ。 「なんだ」 「‥‥前に、自分がいかにちっぽけな存在かを話したじゃない?」 あれはお前が勝手に話したんだがな‥‥ってちょっと待て。お前が読んでたのは哲学じゃなくて医学の本だったろ。なんでそんな断食など意味がないと気づいてしまった、悟りの領域を越したムハンマドみたいなことを言いだすんだ。 「人ってさ、自分の中にさらに他の自分がいるとしたら、人の数なんていうのは、本当はもっと多いのよね‥‥‥」 何を言い出すんだハルヒ。 「そのたくさんある中の1つがさ‥‥‥その人物の人柄と見なされて表に出てくるのよね‥‥‥。でも、せっかく出てこれたその1人も‥‥本当は世界と比べたらちっぽけな存在で‥‥‥」 「一体なんの本を読んだのかまるで分からないがな、ハルヒ。今日はもう寝ろ。俺が許す」 「‥‥‥‥‥」 睡眠不足のせいか、しっかりと思考が働いてないようであるハルヒは、またもやせっかくの俺の気配りを無下にした。確かに俺に昼寝を許可出来るなんていう夢のような権限はないけどな。 そしてこの日もハルヒは、午前午後の授業をボーと過ごした。 「涼宮さんがそうまでして寝ないのは、一体何故なんでしょう‥‥」 朝比奈さんがそう呟いて答える者が誰1人いない部室内で、古泉はお手上げとばかりわざとらしく両手を上げて 「長門さんの方はどうです? 情報統合思念体は、何か言っておられますか?」 と、やはりこいつも最後の頼みの綱にかける他なかったようだ。しかしその長門でさえも 「情報総合思念体からは何も報告を受けていない。でも私から推察するに、涼宮ハルヒは本来年齢約15~18歳までに必要とされている最低睡眠量の内、14時間22分17秒が不足している。原因は彼女が読んでいる医学本‘人格と精神’の熟読。でも、何故彼女が睡眠を一定以上の我慢を強いているかは不明」 と、古泉のようにスタイリッシュアクションで示さないものの、どうやらダメらしい。 「なんでハルヒはそんな本に夢中なんだ?」 「5日前の午後7時02分から放送した‘精神の病’のプログラムの中にあった、多重人格についての内容がさらに詳しく現在彼女が読んでいる本に記載しているというのが、最も考えられる動機。でも彼女が何故異常なまでにそれに固執するのかまでが、不明」 「‥‥そりゃ、なんでだ」 「彼女の記憶をこれ以上読もうとすると、彼女の意思とは関係ないプロテクトが自動的に展開される。根本的な理由というものがその先にある。でも私の今のクッキング能力ではここまでが限界。これ以上は涼宮ハルヒの精神になんらかの異常を脅かす危険性がある。だから私にはこれ以上のことは不明」 つまりだ。2度目だが長門にも無理だということだ。 となれば話は1つだ。 「ハルヒ、なんでそんな本にえらくこだわるんだ?」 「‥‥‥‥‥」 ハルヒ本人が弱々しい状態でなんとかやっと来てから、作戦1として、完璧なおかつ完全、本人に直接聞くという方法が我がSOS団団員その1、2、3、副団長で決定されて実行されたが、あえなく敗退した。どうやらハルヒがこの本‘人格と精神’を読み続ける理由は、応募者100名様限定超プレミアム完全真空パックの切り取り線つき袋閉じ、なくらい秘密らしい。しかしそんなハルヒも、この本と格闘するのが疲れたのか、はたまた単なる睡眠不足なのか、キーボードに突っ伏す形で寝息を立てて寝始めた。また下校時刻まで時間はあるし、暫く寝かせておくのもいいだろう。 その間に 「長門、その本に何が書かれてるのか読んでみてくれないか」 「了解」 ハルヒの顔のすぐ隣にある‘人格と精神’を長門がパッと取ると、世界速読王でさえびっくりするような、新幹線のぞみ級の速さで長門はページを捲っていった。いつも読んでる速度はなんなんだ一体。本を読む速さをさらに鍛えるためにかなりの制限をつけているとしか思えん。 「‥‥‥‥‥」 長門は静かに、元あったように本をハルヒの隣に置いた。結局、ハルヒを虜にするような内容とはなんだったのか。 「この本に、涼宮ハルヒに過度な依存をさせる内容はない」 「なんだと」 「念のため、人体寄生タイプのウイルスが仕組まれているかを確認した。でもそのような物が仕組まれた跡も発動した形跡もない」 そりゃそんな寄生虫みたいなものが図書館の本にあったら大変なことだろう。しかし、どうしようか。これでまた謎が深まってしまった。 「ちょっと失礼します」 古泉がガタリとパイプ椅子から立ち上がり、微笑みフェイスのままハルヒの方へて歩み寄り、その本へと手を差し伸ばした。やめとけ、俺はまだ見てもいないがお前じゃ出来ないと思うぞ。 「もしかしたら、ですけれど‥‥‥」 パラパラと捲り、斜め読みをしていく超能力者は、大体半分辺りまでいった辺りで長門の方へと振り向いた。 「長門さん、この本に暗号が混ざっているという可能性はないでしょうか?」Ⅰ 暗号? 「よくあること、というわけではないのですが、こういった本の作者が茶目っ気を入れ混ぜて、暗号を隠しているということです。つまり、涼宮さんはどうやってかこの本に暗号があることを知り、それを解くために夜更かしをしているわけです。寝たら負ける、というルールのもとで」 なんだその訳の分からん推理は。確かによくサウナとかで、一番最後まで出ないなんていった特に景品がもらえるわけでもない独り我慢大会を起こしている人がいるが、それとこれを結びつけるのはさすがに無理があるぞ古泉。第一今回不思議がっているのは、こんなに睡眠不足でイライラが貯まっているはずなのに閉鎖空間が出ないってとこにあるんじゃないのか。暗号解けなかったら余計イライラが貯まって、大規模な閉鎖空間が発生するんじゃないのか? 「それもそうですね。でしゃばって申し訳ない」 そうだ、古泉。お前はもう出てこなくていいぞ。 「涼宮さん、このままだと風邪ひいちゃいますね‥‥」 そう言いながら、朝比奈さんはコスプレ衣装のとこから上着のようなものを取り出し、ハルヒの背中にかけてやった。朝比奈さんのこんな姿を見たら、マザーテレサ、更には天使でさえ感涙するだろう。 「朝比奈さんは、どう思いますか?」 「‥‥‥涼宮さんの身近に、誰かそういった症状を抱えておられる方がいるんじゃないんでしょうか?」 「ハルヒの周りに、ですか?」 「はい」 朝比奈さんは、今頃ノンレム睡眠に入っているだろうハルヒを見てから、優しく微笑んだ。 「涼宮さん、優しいですから」 そりゃ貴方のことですよ、朝比奈さん。 「確かに、涼宮さんともなると、一度決めたことは意地でもやり通すのもプロ級ですからね。身近にいる生徒‥‥あるいは近所の子供か、涼宮さんがどうしても助けたいと思える人がすぐそばにいるのなら、そして尚且つかかっている病気が精神病ならば、この一連の行動に説明がある程度つきます。しかしですね」 朝比奈さんの言いたいことはもちろんわかる、が癪なことに古泉の言わんとすることも分かる。 「それならば、読書大会なるものを開かずに、自分で勝手に読み始めてしまう可能性の方が高いと言えます」 「涼宮さんが、読書大会を決めた後にそのような人がいたと気づいたとは、考えられませんか?」 「涼宮さんがこの本に興味を持ったのは、5日前に見たテレビが原因でしたよね、長門さん?」 「そう」 「となれば、彼女はテレビで多重人格というものに興味を持ち、そして読書大会を開き、たまたま自分が読みたかった医学の本が回ってきた‥‥‥そしてタイミングを見計らったようにそういった病を持つ人が現れた。これはつまり、涼宮さんがそれを望んだということになります」 ハルヒには願望を実現させる能力があるらしい。だから今古泉が言ったように、自分がその症状を解決、または分析したいがために今の状況を作り出したということになってしまう。偶然、の一言で片づけてしまうならばそれまでだが、それは少し考えにくい。 つまり、ハルヒは私利私欲のために誰かが病気になることを望んだということになる。いくらハルヒが無自覚の能力とはいえ、さすがにそんなことを願ったりはしないだろう。そうだろ。ハルヒ? 「だがな、古泉。ハルヒの能力関係なしに、本当にそういった偶然があるかもしれない。その線を探る必要もあるんじゃないのか?」 「もちろんです。機関の方に、最近涼宮さんと接触した者の中で、そういった心の病を抱えておられる方がいるかどうかを当たってくれるように申請しておきます。それと、どうして閉鎖空間が発生しないのか‥もね」 そこまで話したところでハルヒがうーんと唸りながら寝返りをうったので、この話はお開きとなった。しかし、長門でさえ原員不明とはな‥‥‥。 だがさっきまで信じられないスピードで本を捲っていたのに、今はまたいつものスピードでペラペラと本を読んでいる宇宙人も、冷めてしまったお茶をまた温めている未来人も、珍しくボード盤を開かずに誰かのエッセイを読んでいる超能力者、そしてこの俺も。今までやっていた隠れミーティングが無駄だったんじゃないかと思うのは、ハルヒが下校時刻5分前に起きてからだった。 「あっー!!もうこんな時間じゃないのよ! どうして誰も起こしてくれないのっ!」 起きてから第一声がこれだ。だが、さっきに比べて随分元気そうに見える。それを見計らったかのように長門は本をパタンと閉じ、帰り支度をし始めた。俺は結局、この時間の間、宿題をして時間を過ごした結果となったわけだ。哲学書は家にあるしな。 「もう! 次からはちゃんと起こしなさいよキョン。ふぁあ‥‥‥あー、でもよく寝たわ」 背伸びを存分にしてから、ハルヒも‘人格と精神’を鞄の中にしまい、鍵を持って部屋を出た。どうせその鍵は俺が返すはめになるんだろうがな。 と、思った矢先だ。 「あたし、鍵返してくるから皆先帰ってていいわよ」 信じられない発言がハルヒの口から飛び出したことを俺は確認した。睡眠をし終えたばかりで気分が絶好調なのか、あるいはまだ寝ぼけているのかどうかを疑うような状態じゃないか。ハルヒ、お前家に帰ってからもっかい寝た方がいいぞ。 ‥‥‥と言うわけもなく、俺はハルヒの好意に甘えることにした。自ら面倒くさいことを進んでやるハルヒなんて、珍しいことこの上ないからな。 「では、お先に失礼します」 「あ‥‥あたし待ちますよ」 「いいのみくるちゃん。ちょっと用事もあるしね。先行ってて。すぐ追いつくから」 ハルヒがこう言ってるんだ。朝比奈さん、先に行きましょう。 「で‥‥でも」 朝比奈さんがそう戸惑っている間に、ハルヒは駆けてくように職員室へと向かって行った。ここに置いてある鞄はどうやら俺が運ぶはめになるらしい。 「‥‥‥‥‥」 「どうした長門。科学の本をまだ5冊読み終えてないのか?」 長門の沈黙具合がいつもと違ったように感じたので、そう声かけてみたが 「今25冊目」 と、1日8冊読んでもそんなにも読めないペースで読んでいるらしいということだけが分かった。長門の無機質な声にも最近変化が感じとれるようになってきたと感じた俺だったが、しかし今の返答を見るとまだまだ俺は長門の心情をちゃんと察しているわけではないんだなと改めて分かる。長門は苦労しても顔に出さないから、知らず知らずの内に負担をかけてないといいが‥‥‥。 朝比奈さん、古泉や長門とも別れ、それでもハルヒが来ないので、俺は踏切前で重い鞄を持ちながら待つことにした。ハルヒの奴、いつもこんな重い鞄持ってるのか。ここ最近たまたま‘人格と精神’が入っているせいかもしれないが、にしてもこんな鞄を持ってよくあんな細い腕でいられるな。草野球の時だって、あいつだけは長門の力を借りずにパコンパコンとヒット打ってたしな。どこからそんな力を蓄えているのやら‥‥。 そんなことを暗くなっていく空を眺めながらボーっと考えていると、ようやくにしてハルヒが姿を現した。一体何の用事だったんだ。 「貸しなさいよ」 鞄を俺からひったくり、そのまま何事もなかったようにハルヒは帰っていく。お前、そこはありがとうだろ。 「なーんてね、ウソウソ。」 ハルヒは振り返りながら俺の顔を直視し、 「ありがと、キョン」 と言って走り去って行った。 ‥‥‥‥‥。 「えっ?」 ハルヒの睡眠不足がもうすでに精神を相当脅かしているんじゃないかと疑ったのは、まさにこの瞬間だった。 →涼宮ハルヒの分身 Ⅱへ
https://w.atwiki.jp/yuriharuhi/pages/45.html
冬休みでだらけきった体が、ようやく学校生活のリズムを取り戻してきたと感じる今日この頃。 我らSOS団は何をしているのかと言うと、何故かまたもや機関紙作りに励んでいたりするわけだ。 と言っても今回は生徒会も古泉も関係ない。 ハルヒの純然たる思いつきによるものだ。 ちなみに今回の俺の分担は幻想ホラー。 はっきり言って何を書けばいいかわからんが、まあ恋愛小説よりは幾分かマシだ。 古泉と朝比奈さんは前回と変わらず、それぞれミステリと童話。 その二人は今はいない。 用事があると言って二人とも帰ってしまった。 そしてなんと言っても特筆するべきは長門の恋愛小説だろう。 俺の知る限り最も恋愛小説とは遠そうな人物であるだけに、興味はあるのだが。 果たして本当に長門が恋愛小説というものを書くことができるのだろうか。 当の長門はここ数日、キーボードを少し叩いてはフリーズして、また少し叩くという行動を繰り返している。 「有希、できた?」 早々に自分の分を書き終えたハルヒが長門の背後からパソコンを覗き込む。 「結構できてるじゃない。どれどれ」 ハルヒは長門の小さな肩に顎を置くと、そのまま読み始めた。 最初はふんふん、と頷きながら文章を追っていたハルヒだったが次第に様子がおかしくなっていった。 顔は軽く紅潮し、声にならない声をあげている。 ハルヒは長門から体を離すと、どこか恥ずかしそうに長門を見つめた。 「有希…あなた、これって」 長門は何も言わずにただコクリと頷いた。 ハルヒは小さく「そう」とつぶやくと更に顔を赤くして固まってしまった。 一体、どんな内容が書かれていたのだろうか? 俺は自分の席を立つと、長門の後ろからパソコンを覗き込んだ。 私の体にエラーが発生したのは、いつの頃からだっただろうか。 正確な時刻は私にはわからない。 しかし、その原因が彼女にあることだけは確かだった。 彼女と最初に会話をしたときのことは正確に記憶している。 彼女は、文芸部の部室で読書をしていた私の前に現れると、唐突に部室を貸して欲しいと言った。 私がそれに了承すると彼女はすぐにまたどこかに行ってしまった。 彼女がSOS団という組織を立ち上げ、私がそのメンバーに入っていることを知ったのは放課後になってからだった。 私は以前より彼女のことを知っていた。 私は彼女を知るために存在していると言った方が正確かもしれない。 そういう意味では、彼女と同じ組織に身を置くということは私にとって悪い話ではない。 彼女をより理解するために観察する日々が始まった。 彼女は感情豊かな人間だった。 感情というものの概念が理解できない私にとって彼女の行動は不可解なことが多かった。 私は彼女の観察を続けた。 次第に私個人としての意思が観察とは別の目的で、彼女の姿を目で追っている事に気がついた。 おそらくエラーが最初に発生したのは、この時からだと思われる。 発生当初は無視できるレベルだったエラーは次第に大きくなっていった。 気がつけば、私の思考の63%が彼女に対する任務とは無関係な事項で占められていた。 自分に与えられた役目をこなすに当たって、良くない影響を与える数値だったが私はエラーを消去できなかった。 消去しようとは思わなかったからだ。 それどころか私はいつの間にか、この正体不明のエラーを心地よく思っていた。 このエラーが何なのか、私は有機生命体によって書かれた資料に答えを求めることにした。 その結果、このエラーが有機生命体における恋愛の概念に酷似しているという結論に至った。 だが私と彼女は生物学的には同じXX染色体で構成されている。 だが子孫を残すためにプログラミングである有機生命体の恋愛は私には当てはまらない。 普通ならば別に原因があると考えるべきだろう。 しかし不思議なことに、何故だか私はこのエラーが彼女に対する恋愛感情であることを確信した。 その後、別の資料によると同姓同士での間に恋愛感情が発生することがあることを知った。 やはり私の確信は間違っていなかったようだ。 私の中のエラー、いや、恋愛感情は日を追うことに増大していった。 気が付けば脳内の仮定の中で彼女を弄んでいる自分がいた。 私は そこで文章は終わっていた。 どうやら、まだ書きかけらしい。 しかしだな、これは……俺はどう反応すべきなのか。 「私には、有機生命体の感情を完全に理解することはできない」 いつの間にかハルヒの前に立っていた長門がそう言った。 「他者の恋愛感情を想定、構築することは困難を極める。よって自己の経験を記すことにした」 見ればハルヒはさっき以上に真っ赤になってやがる。 「有希!」 ハルヒはそのまま絞め殺してしまうんじゃないのかってほどの勢いで長門を抱きしめた。 おいおい、俺がいることを忘れてやしないか? 「ごめんね。有希が私のことそんな風に思っていたなんて、ちっとも気付けなかった」 「いい。今の状況に私は満足している。ただ」 長門は三秒ほど止まってから、言った。 「私はという個体はもっと貴方と触れ合いたいと感じている」 ハルヒは一瞬驚いたような表情をすると、俺の方を睨み付けた。 「キョン、ちょっと出て行きなさい!」 やれやれ、何する気だよ、全く。 さすがに出歯亀する勇気の無い俺はさっさと荷物とまとめて帰りましたとさ。 それからのこと? 悪いが知らんな。 それからハルヒは不思議探索が終わった後、そのまま長門の家に泊まるようになったことだけ付け加えておくよ。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/262.html
今日は週に1度の不思議探索の日。俺は普段通り集合時間の30分前には到着する予定で歩いている。 そのとき突然ハルヒからの電話があった ハ「今日は中止にして。あたし熱出しちゃったから。みんなにはあんたから言っておいて・・・」 集合場所に着くと、やはりみんなもう着いていた。 キ「今日はハルヒが熱出したから中止だ。さっき電話があった。」 長「・・・そう。」 朝「涼宮さんは平気なんでしょうか・・・」 キ「どうでしょう。元気の無い声してましたけど、電話できるくらいなら平気だと思いますよ。」 古「・・・わかりました。それではこのまま解散でよろしいですか?」 古泉はこういうときだけ副団長の役割をしていると思う。 キ「いいんじゃないか。長門も朝比奈さんもいいですよね?」 朝「あ、はい。」長「・・・いい。」 古「それでは解散ということで。」 朝「あ、キョン君。涼宮さんのお見舞いに行ってあげてくださいね。」 キ「はあ・・・でもそれならみんなで行った方が・・・」 朝「みんなで行ったら迷惑になりますから。」 長「・・・貴方一人の方がいい。」 おいおい長門まで・・・ 古「僕もそのほうがいいとおもいますよ。」 古泉、お前もか。 キ「ふぅ・・・行くだけ行ってみるか。」 俺一人が行こうがみんなで行こうが迷惑なのは変わらないようなきがするんだが。 そう思いつつもハルヒに電話をした。 キ「よう。元気か」 ハ「元気じゃないわね、熱が出たって言ったの聞いてなかったの?」 キ「聞いていたとも。今から見舞いにいくからおとなしくしてろよ。」 ハ「ちょっ、キョン!!こ、こなくて(ry」 俺はハルヒが何か言う前に電話を切っていた。ピンポーン。 キ「よう。ハルヒ。・・・何でそんな格好してるんだ?」 ハルヒはこれから出かけるのではないかというような格好をしていた。 それも額に冷却シートをはったまま。 ハ「だ、だって、急にキョンがくるなんていうから・・・///」 キ「それは・・・悪かった。そんなことより起きていていいのか?」 ハ「あんたがチャイムならしたからわざわざむかえにk・・・」 クラッとハルヒは倒れかかった。 俺はハルヒを両手で支え、 キ「おっと、そんな格好してるからだぞ。熱が出てるときぐらいパジャマで布団に寝てろ。」 ハ「わかったわよ・・・でも、起き上がれそうに無いの。」・・・ってことはこのまま運べと? キ「本当か?うそなんてこと無いか?」 ハ「本当に体が重いの。」俺は仕方なくお姫様抱っこのままハルヒの部屋まであがった。 そのときのハルヒの顔は終始真っ赤だった。 ハルヒに聞いてみると「熱だから仕方ないのよ。」 まぁ俺の顔も赤くなっていたことは秘密だ。 ハルヒの部屋は初めてではないが、女の子の部屋っていうのは入るたびに緊張するものだな。 ハルヒをベットに寝かせた後俺はその辺に腰掛けた。 キ「ハルヒ、大丈夫か。」 ハ「大丈夫じゃないわ。こんな格好してるし、さっき無駄に声出したから。」 キ「じゃあそのまま寝てろ、やって欲しいことがあるなら聞いてやるから。」 ハ「・・・ありがと。」 ハルヒは俺に聞こえるか聞こえないくらいの声でそういった。 だが俺にはちゃんと聞こえていた。こういうときのハルヒはものすごく可愛い しかし、可愛いと思えたのもつかの間。とんでもないことを言ってきた。 ハ「ねぇ、キョン。///」 キ「なんだ?」 ハ「この服着替えさせてくれない・・・//////」 キ「ぶふぅ!! やって欲しいことがあるならやってやるといったが、それはないだろ・・・///」 ハ「だ、だって・・・この格好じゃ寝にくいじゃない・・・/////」 キ「でもな、ハルヒ。俺がやるってことは ハ「じゃあいいわよ。」 そういってハルヒはそのまま俺に背中を向けて寝てしまった。 キ「・・・ハルヒ。悪かった。でも流石に俺にはそれはできない。他のことなら聞いてやれるから・・・機嫌直してくれ。」 そういうとハルヒはこっちを向き、 ハ「じゃぁ、しばらく手握ってていい・・・////」 キ「そ、それなら・・//////」 俺はそのままハルヒが寝付くまでずっと手を握っていた。 一生その手を離したくないと思いながら・・・ おわり
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1005.html
涼宮ハルヒの台湾 プロローグ 涼宮ハルヒの台湾 一日目 涼宮ハルヒの台湾 二日目 1 涼宮ハルヒの台湾 二日目 2 涼宮ハルヒの台湾 二日目 3 涼宮ハルヒの台湾 三日目
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/558.html
太陽がサボっているせいなのか、4月も近いというのに真冬並みに冷え込んでいた。 俺が外出という選択肢を排除し、家でぬくぬくと快適に過ごそうと決めたまさにその瞬間に携帯がうるさく鳴り出した。 携帯に表示されていた名前はやはりあいつだった。 「もしも・・・」 「今からあたしんちまで来なさい!!大至急よ!!5秒で来なかったら死刑だからねっ!!」 やれやれ、ったくあいつはいつも勝手だな。 悪態をつきながらも、せっせと出かける準備をする。 さてと、行くか。・・・って、おい。 俺はハルヒの家の場所なんか知らんぞ。しょうがない、ハルヒにかけ直すか。 と、携帯を手に取ったときに家のチャイムの音がした。 「キョンく~ん、ユキちゃん来てるよ~」 妹が満面の笑みを浮かべて俺の部屋に入ってきた。 「どこ行くの~?ユキちゃんと二人ぃ~?エヘヘ~」 こいつは何か勘違いをしとるな。 「俺はハルヒの家に行くんだ。長門もおそらく呼ばれたんだろうよ」 「ハルにゃんのとこ?あたしも行くっ!」 「お前はおとなしく待っていなさい!」 「ぷ~!いいも~んだっ!シャミ~遊ぼ~」 やれやれ、いちいち疲れるな。 おっと、長門を待たせてるんだったな。 玄関を出るとやはりそこにはいつもの制服姿の長門がいた。 「長門、何か用か?」 「涼宮ハルヒに呼ばれた」 「そうか、お前もか。でもここはハルヒの家じゃないぞ?」 「知っている」 「じゃあなんで・・・」 「あなたは涼宮ハルヒの家を知らない。だから私が迎えに来た」 「長門・・・、いつも悪いな」 「いい」 さすがは長門だ、何でもお見通しだな。しかしまた迷惑かけちまったな。今度美味いカレーでも奢ってやろう。 それから長門の案内でハルヒの家に向かった。 「そういや長門、ハルヒの奴なんか言ってたか?」 「何も」 「そうか」 やはりハルヒはハルヒか。 「でも、ひどくあわてている様子だった。」 そうだったか?俺には怒鳴っているだけにしか聞こえんかったがな。 それにしてもあのハルヒがあわてるだって?一体なんだってんだ? これがハルヒの家か。結構でかいな。意外とあいつもお嬢様だったりするのか? ハルヒの家に着くとそこには見知った二人がいた。 「おや、あなた方も呼ばれていたのですか。いや、やはりと言うべきでしょうね。フフっ」 笑顔の気持ち悪い奴だ。その笑い方、こいつ事情を知ってやがるな。 「あ、キョン君、長門さんもこんにちは~」 にこっ。 あぁ、朝比奈さんの笑顔を見てると暑さなんて吹っ飛びそうだ。 挨拶もそこそこにして、いよいよチャイムを鳴らす。 さぁ、何が出るんだ?鬼か?蛇か?何でも来い! 数秒後、ドアが壊れていないか心配になるほどの轟音とともにハルヒが姿を現した。 泣き喚いている赤ん坊を抱いて。 「みんな、よく来てくれたわね!あたし1人じゃ手に負えなくってさ。」 「あ~、ハルヒ。お前に子供がいたのには驚いたが、いじめるのはよくないぞ、そんなに泣かせて。」 「このバカキョン!あたしの子供なわけないでしょうがっ!親戚の子供を預かってるだけよ。」 ハルヒの話を聞くに、親戚の子供を預かっているのだが、ハルヒの両親も出かけなくてはならなくなったらしく 1人で面倒を見ることに限界を感じたらしい。 「しょうがないじゃない。子供育てたことなんてないんだからさ。」 そりゃそうだ。俺だってこんな状況になったら、とにかく応援部隊を呼ぶだろうよ。 「とにかく入って。すんごい寒いし。」 そういって俺たちはハルヒの部屋に向かった。 「え~っと、まずは自己紹介ね!」 部屋に着くなり自己紹介をしだした。まずは泣き止ませることが先だろうが。 「この子は平野綾ちゃん!まだ1歳にもなってないわ。生後6ヶ月とか7ヶ月とか……まぁそのへんね。」 「みんな!よろしくねっ!」 「ふぎゃあぁぁぁぁぁ~!!」 なにがよろしくねっ、だ。ものすごい勢いで泣き続けてるぞ。 「しかし呼ばれたはいいが、俺には何も出来そうにないぞ。」 「ほ~ら綾ちゃん、あのまぬけ面を見なさい!きっと楽しい気分になって泣くことなんて忘れるわっ!」 お前はそのために俺を呼んだのか。ハルヒの思惑とは裏腹に、赤ん坊は一向に泣き止む気配は無い。 「おっかしいわね~。これで泣き止むと思ったのに。」 おかしいのはお前の頭のほうだろ。 「とにかく色々試してみましょう!まずは古泉君っ!まかせたわ!」 こいつはもしかして楽しんでるんじゃないか? 「分かりました。僕に考えがあります。」 ほう、余計な知識は豊富なこいつのことだ。きっと赤ん坊を泣き止ます方法も知っているんだろうよ。 ゴソゴソ、古泉は鞄の中からスプーンを1つ取り出し、赤ん坊の前に置いた。 まさかな。というかこいつは常時スプーンを携帯しているのか?それともやはり事情を知ってて準備してきたのか。 「綾さん。このスプーンをよ~く見ていてくださいね。」 ふぅ~っと、ひとつ大きなため息をついた後、カッ!と目を見開かせて 「ではいきます!マッ…『ふぎゃあぁぁぁぁぁ~!!』」 何も出来ずに拒否反応を見せられ、さすがの古泉もかなりヘコんだようだ。今のは同情してやろう。南無。 「古泉君じゃダメみたいね。う~ん……、そうだわ!赤ちゃんと言えばやっぱりおっぱいよね!」 朝比奈さんが本能的に体をビクッと震わせた。俺にもこいつが何したいのか手に取るように分かるぜ。 「みくるちゃん!あなたが一番母乳出そうね。さぁっ!脱ぎなさ~い!!」 「ふぇ!?い、いい嫌です~!うぅ~。」 「ほらほら、さっさと脱ぐの!綾ちゃん待ってるじゃないの。」 「で、でも~!私まだおっぱいなんて出ません~。そ、それに……」 チラっとこちらの方を見る朝比奈さん。そりゃそうだ。この状態じゃあいくらなんでもな。 「古泉、早く出……『出てけぇ!!』」 せっかく穏便に出て行こうとしたのにハルヒに蹴飛ばされるようにして部屋から追い出された。 「さぁみくるちゃん。邪魔者はいなくなったわ。」 「う、うぅ~」 あぁ~、今頃朝比奈さんは授乳で悪戦苦闘しているのだろうな。そんなことを想像していた。 「あ、……ん!あ、赤ちゃんって、ふぁ…吸うの…強いですぅ~。」 どうして俺は録音機材を持ってきてないんだろう?人間てのは無力だな…。 「入っていいわよ。」 赤ん坊は泣き止んではいたが、いつまた泣きだしてもおかしくない顔をしていた。 もっとも朝比奈さんは顔を真っ赤にしながら泣いていたが。 この子が女の子で良かった。男だったらいくら赤ん坊でも許すことは出来んだろう。 「う~ん、一応泣き止んではくれたけど、まだ何か足りないわね。」 確かにこのままでは泣きだすのも時間の問題だろう。 「有希、とりあえず何かしてみてちょうだい。」 コク、と長門式うなずきをした後、長門は赤ん坊を凝視し始めた。 じー…… おい、そんなに睨んでやるな。状況が悪化する。 「まかせて」 そう短く答えると、驚くべきことに、長門は赤ん坊のおしめを変えたり、ミルクを作ったり さらには赤ん坊を優しく抱きかかえ、子守歌まで歌いだした。 「もう大丈夫」 赤ん坊はすっかり気持ちよさそうに眠ってしまった。 「長門よ、一体どこで子守術なんぞ習得したんだ?」 「図書館の雑誌に書いてあった」 雑誌?長門は雑誌なんかも読むのか。すると続けて言った。 「ひよこクラブ」 その後、赤ん坊もすっかり落ち着いたところで、みんなは解散することになった。 俺を除いてだが。 「なぁハルヒ。なんで俺だけ残らにゃならんのだ?」 「うるさいわねぇ!男がそんな小さいこと言わないの。」 「へいへい」 ハッキリ言って俺が残る理由が分からなかった。 ハルヒもまた赤ん坊とタイマンになるのは心細かったのか? だとしても俺なんかより長門を残せばいいだろうに。 俺なんか残ったってなんの役にも立たんぞ。 「ミルクとか他は有希が用意してくれたからなんとかなるわ。 後はうちの親が帰ってくるのを待つだけね」 しばらくすると赤ん坊は起き出してまたぐずり始めたが そこは秀才なハルヒである。長門がどうあやしていたかをちゃんと見ていたようだ。 気がつけば、すっかり日も暮れて夜になっていた。 赤ん坊にミルクをやると同時に俺の夕飯まで用意してくれた。 それはもう絶品だったね。 「さて、ミルクもあげたし。そろそろお風呂に入れないと」 俺は風呂と言う単語聞き、あからさまに反応してしまっていたらしい 「キョン~、もしのぞきでもしたら即刻死刑なんだからね!!」 「わかったわかった。のぞかないでやるからさっさと入って来い」 ハルヒはもう一度俺に釘を刺してから風呂場へ向かった。 俺はハルヒが風呂に入っている間、健全な男子高校生なら 仕方がないであろう、ハルヒの入浴姿を想像しながら悶々としていた。 ハルヒは自分の部屋で休んでろと言ったので、俺は今ハルヒの部屋にいる。 さっきみんなでいたときは気づかなかったが、いい匂いがするな。 俺は疲れた体を休ませるべく、吸い込まれるようにハルヒのベッドに横になった。 これまたとんでもなくいい匂いだった。 ガチャ、とドアが開き、風呂上りのハルヒが赤ん坊を抱いて部屋にやってきた。 俺は風呂上りのハルヒの姿を見て、さらに興奮してしまっていた。 「あんたも入ってきたら?」 「あぁ、そうさせてもらう」 そして俺は風呂に入った。まず俺は髪から洗った。 涼宮家のシャンプーはやや高級な品なのだろう。 スーパーでは見たことのないものだった。 そして体を洗う。最初は左手から洗い、左足、右手、右足と洗っていく。 まず四肢を洗い終えてから体を洗うのが俺流だ。 「それにしてもボディーソープも高いやつなんだろうな」 そんな独り言をしてしまうほどいい匂いだった。 そして涼宮家の風呂を一通り満喫した俺は、風呂を後にした。 ふぅ~、気持ちよかった。 俺は体をタオルで拭きながらさっさと自分の服を着ようとした。 のだが、無い。服がなくなっている! 「なんで俺の服がないんだ?」 思わず自分に聞いてみても答えは返ってくるはずもなく 俺は途方にくれた。 俺は確かにここに置いといたはずだ。なくなってるということは ん?まさかハルヒが?まさかもなにもこんなことをする奴はハルヒしかいないだろう。 フヒヒ、こんなイタズラをするハルヒには俺がもっとすごい悪戯をしてやるぜ。 俺は素っ裸の状態でハルヒの部屋に向かった。 それにしても他人の家で素っ裸で行動するのは落ち着かないな。 ハルヒの部屋に着いた。 ハルヒよ、悲鳴をあげてももう遅いぞ。 悪いのは全部お前なんだからな。 さぁ、覚悟は出来てるんだろうな! ガチャ、とドアを開けると そこには赤ん坊と寄り添って気持ちよさそうに寝ているハルヒがいた。 ハルヒの横には俺の服が置いてあった。 イタズラしたはいいが、疲れが溜まって眠ってしまったのだろう。 俺はハルヒと赤ん坊に毛布をかけてやり、ハルヒの隣に横になって寝た。 翌朝 「ん~っ!よく寝た!」 あたしいつの間に寝ちゃったんだろ? あ!キョ、キョンの服隠したまんまだった!! ど、どうしよ~。キョン怒ってるかな? そんなことを考えていると、横からイビキが聞こえてくる。 キョンいつの間に?あ、この毛布キョンが…。ありがとね、キョン。 「……ん?………ッイヤアァァァァァ!!」 「うお!?なんだ!どうしたハルヒ!?」 「あんた何で素っ裸なのよおッ!!」 終わり
https://w.atwiki.jp/melphonse/pages/9.html
ニコ生の歩き方 あいさつ ニコ生でのあいさつは 基本「わこつ」です。 わこつとは、枠取りお疲れ様です。 のことを意味しています。 枠とはその放送のことです。 枠の終了の時には 「おつ」とあいさつをします。 コテハン コテハンとは固定ハンドルネームの略で ニコ生での名前を意味しております。 コテハンのつけ方は コメントで「@名前」でコテハンを登録できます。 Aさんの枠でコテハンを登録したとしても Bさんの枠ではコテハンは登録されていません。 ご注意ください。 184 184(いやよ)とはコメントを匿名で投稿した場合の 呼ばれ方です。 これをつけているとコテハンを登録しても登録されなかったり 登録されても消えてしまったりしてしまいます。 184はニコ生の設定のところから 匿名(184)コメントで投稿するというところのチェックボックスを いじることによって変えれます。 コミュニティー参加 コミュニティー参加とはその放送をしている 生主さんのコミュニティーをお気に入り登録することです。 放送タイトルの少し上にコミュニティーの名前があるので そこをクリックするとコミュニティーがでてきます。 出てきたコミュニティーに黄色く このコミュニティをお気に入り登録する とありますのでそこをクリックすると コミュニティー参加できます。 用語 生主=生放送をやっている人 リスナー=放送をみている人 初見=そこの放送に初めて行ったときに使うあいさつ ROM専=コメントをせずに放送をみてるひとのこと tmt=放送がとまったときにつかうことば
https://w.atwiki.jp/haruhioyaji/pages/339.html
ハルヒ先輩8から 「じゃあ、おねがいします」 「はい、確かに。いってらっしゃい」 「……母さん、いまのキョン?」 「ええ。毎朝、けなげにお弁当を届けに来る子なんて他にいないわ」 「もう、自宅にいるんだから、必要ないのに……」 「とは言うものの、毎日しっかり食べるのね」 「だって……残したりしたら、あいつ、悲しそうな顔するもの」 「はいはい。ごちそうさま」 「……母さん、あたしって、わがままかな?」 「どういう意味で言ってるのか分からないけど……そうね、多分」 「キョンは何であたしみたいなのと、付き合ってくれてるの?」 「さあ、そればっかりは。……わたしも、お父さんがどうしていっしょにいてくれるんだろうって、ときどき思うわ」 「あたしは母さんが、あの親父といっしょにいるのが、いまだに理解できない」 「そう? 前にお父さんが言ってたわ。『好きってやつだけは、どうしようもない』って」 退院はしたものの、足の捻挫は思ったよりもひどく、折った腕をつりさげたまま松葉杖を使うのも無理があり、あたしは2週間ぐらいになるかもしれない「自宅休養」をとるはめになった。 大学の退屈な授業も、暇つぶしくらいにはなっていたことを痛感した。ああ、思いっきり暇だ。 「暇だ、暇だ」と言うやつは、要するに「さびしい」と鳴いているのだと、親父はまたインチキなことを言っていったが、今は認めざるを得ない。あたしはさびしい。今まで味わったことがないくらいに。 どれだけ会いに来てもらっても、会いに行けないってことがストレスになって、あたしにのしかかった。 キョンは朝夕と、毎日、うちに通ってくれた。朝はさすがにお弁当を届けるだけだけど、夕方は夜まで一緒にいてくれる。お弁当を作る時間を省いて、朝ももう少し居てくれたらいいのに、と思ったがさすがに口に出せなかった。元はと言えば、あたしが押しつけた習慣だ。キョンは律儀に(それ以上に頑固に)その習慣を守っている。雨の日も、大雨の朝も。 「キョン!」 「ハルヒ! 雨の日は杖がすべって危ないって言っただろ。こんな日に外に出るな」 「あんたこそ、何? こんな雨の中を! 遭難したらどうすんのよ!?」 「雪山じゃないし、さすがにそこまではないと思うぞ。でも、心配かけたなら謝る」 「なんで、あんたがあやまるの? 悪いのは、あたしじゃないの!」 「ハルヒは悪くない。これは俺が好きで続けてるんだ」 「元はといえば、あたしが押しつけたんでしょうが」 「ハルヒ」 キョンは明らかに腹を立てていた。当然だろう、あたしはばかだ。 「ハルヒ、なんか勘違いしてないか? たとえば、おまえが言えば、おれがなんでも従うだろうとか」 「ちがうっての?」 「あたりまえだ!」 あたしは間違ってた。間違ってることに気付いてもいた。だったら謝ればいいのに。でも勢いで、言いたいのと違う言葉が口から出た。 「じゃあ、なんだっていうのよ!?」 キョンはすうと息を吸ってから叫んだ。 「おまえが別れろって言ったってな、絶対いやだって言うからな!」 「バカキョン!! そんなこと言うわけないでしょ!」 「いや、だから、例えばの話で……」 「たとえばも、へったくれもないわ!! いい? あんたが、知ってる人が誰も居ない場所に居て、路地の奥かどこかで血を流してのたうちまわってたら、必ずあたしが行ってあげる。死にそうなくらいさびしくなっても、何をしても楽しくなくていっそ死んでしまった方がいいんじゃないかと思うことがあっても、あんたのアタマを割れそうなぐらいぶっ叩いてでも、正気にかえしてあげる。あたしから逃げようたって、そうはいかないわ!」 「誰が逃げるもんか」 「だったら一緒にいて! これからずっと一緒にいて! ええ、むちゃくちゃなこと言ってるくらいわかってるわよ! あんたと毎日会うのは楽しいわ。あんたが来てくれるにはうれしい。でも、あんたが帰っていく時、歩いていって見えなくなったとき、体中が痛いくらいさびしくなるし、不安になる。万に一つでも、二度とあんたと会えなくなったらどうしようって思うから! あんたが……」 「ハルヒ、もういい」 あたしの言葉は、頭ごと、キョンの胸に押しつけられた。 「ハルヒが言いたいこと、全部わかる」 キョンは、びっくりするくらい静かな声で言った。 「18の誕生日が来たら、迎えにいく。養われてる立場だし、式とか新婚旅行とか、そんなのみんな、後になると思うけど。おれもハルヒとずっといっしょにいたい。……これでいいか?」 もう、ずっとこうしていたかった。でも無理よね。一瞬忘れてたけど、どしゃぶりの中で怒鳴りあってたんだわ、あたしたち。もったいないけど、一時中断よ。こんなところでエンド・マークを打つ訳にいかないじゃない? 「い、良いわけないでしょ、バカキョン! ……せ、せめて、さらいにいくって言いなさい!」 それから? 二人して、ずぶぬれになりながら、あたしの家に帰ったわ。二人の未来のことを、怒鳴り合いながらね。 「さあ、気合いれて幸せになるわよ、キョン!」 「いや、おれはすでに、ものすごく幸せだけど」 「なに、それ? いつから?」 「ハルヒと会ってから」 「だから!! あんたは、なんで、タメもモーションもなしに、そういうパンチを打ってくるのよ! 全部、被弾よ!」 「だめか?」 「あたしも幸せだから、これでいいわよ!」